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第81回コラム「ジュニア強化の理念」

選手強化に直接かかわる活動、選手強化、タレント発掘、選手育成、ジュニア育成、指導者強化、指導者育成、など様々な活動をスタートしている。しかし絶対的な人間数が足りていない。だが時間は待ってくれない。限られたメンバーでスタートし、それぞれが目標に向かって動き続けている。2010年から日本トライアスロン連合はオリンピック強化をメインとした強化体制を作りロンドンに向けて全力疾走を始めた。ナショナルチーム監督として飯島健二郎を配置し、全体をマネージメントする山根英紀、そして私がジュニアおよびU23の監督としてチームは構成されている。基本的な選手強化はそれぞれの所属先コーチが指導する現状は変わらない。だが一般強化とオリンピック強化では求めるものが違ってくる。そして場合によっては非情な決断をし、無情な判断をしなければならない。一体、どこに向かって走ってゆくのか。その方向性を定めてゆくことが最も大切な役割なのだ。当然、責任は重い。

2008年にJTU強化理念として『私たちは、トップアスリートだけを目指すのではなく、一人の人間として誰からも尊敬される真のエリートを目指す』と掲げた。ほとんどのトライアスリートは知らないかもしれない。表面的な強さばかりを求めて根本的な強さを求めていない選手、指導者への呼びかけを意味している。

そして今年、U23&ジュニア監督となった私は次の理念を掲げた。
『我々はトライアスロンを通して健全なる身体と強固なる精神を養い、未来のリーダーとなれるよう取り組んでゆくものとする』
1)感謝の気持ちと、謙虚な気持ちをもって生活をする。
2)レースでは常に正々堂々と戦う。
3)レース以外でも他選手の見本となり尊敬されるような言動を取る。
4)心と身体に真の強さを身につける。

選手強化とは関係ない、と思う選手もいるだろう。こんな言葉よりも技術的向上を求める者もいるだろう。だが、この言葉の意味が理解できない選手は日本代表にはなれても世界で勝つことはできない。心の育っていない選手は、最後の場面で必ず折れるからだ。

2010年アジア選手権。違反行為をする他国の選手に腹を立てながらも正々堂々と勝負をしたジュニア選手がいた。コースミスをしたが他人の責任とせず、自分を戒め最後まで戦い続けた選手がいた。今、その瞬間だけの結果ではなく、将来を見据え、「日本選手」として誇りを持った戦いをジュニア選手がしたのだ。それは、その選手を育てた指導者の功績でもある。その選手達は将来きっと更なる飛躍を遂げてくれるだろう。

今までも指導者のレベルについて話をしたが、選手の「心」を育てる指導者が増えていることは本当に喜ばしいことだ。ジュニアは指導者の背中を見て育つ。

(写真1)日本ジュニア選手権にて

(写真1)日本ジュニア選手権にて

(写真1)日本ジュニア選手権での一コマ。
自身のレースが終了したのちにレース会場でゴミ拾いをする選手達。ルールすら守れないトップ選手や、物事の本質を見抜けない大人にこの姿を見せてやりたい。左から、土井、生田目、古谷、久保埜、椿、阿部。写真には映っていないが細田と、ジュニアエリートと呼ばれる選手が自ら実行している。八尾、村上コンビが育てた選手達が多い。

(写真2)

(写真2)長良川ジュニア選手権にて

(写真2)長良川ジュニア選手権の一コマ。
小原工と、彼が指導するチームエフォーツの選手達。選手の間から謙虚に顔を覗かせるのが小原。礼節を重んじ、本当の意味で日の丸を背負い戦った彼の育てた選手がどこまで成長するか楽しみだ。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本の
トライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタート ライアス
ロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

“第81回コラム「ジュニア強化の理念」” への1件のフィードバック

  1. 怪獣の父親 より:

    中山さんの言われるとおりです。
    それが「感動」させる選手を育てるんだと思います。

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