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Vol.1:風神の巻 序章1:トライアスロンは遊びから始まった。

日本トライアスロン物語

※この物語は歴史的事実を踏まえながらも、ストーリー性を加味させる為、若干の脚色を施しています。しかし、事実を歪曲したり、虚偽を記すことはありません。また、個人名はすべて敬称を省略しています。

序章1

トライアスロンは遊びから始まった。

【この記事の要点】

トライアスロンは遊びから始まった。ここはアメリカ西海岸カリフォルニア州サンディエゴ。太陽の光がさんさんと降りそそぐ海岸で、スポーツ大好き人間の若者たちが砂浜に寝そべり語らっていた。この海辺の町に集まってくる若者たちは、海で泳いだり、サーフィンを楽しんだり、砂浜を駈けっこしたり、仲間達とスポーツに興じるのだ。

カリフォルニア州サンディエゴ

温暖な気候と自然景観が豊かなサンディエゴ海岸(写真提供:メイストーム)

「やあキャサリン、調子はどうだい」

「最高よ。お天気もいいし…トミーはどう?」

「もちろん、絶好調さ。きょうは走ったあとでジャックとバイクに乗るんだ。だって…ランニングでは、彼に勝てないからね。ぼくの得意な自転車も一緒にやろうと約束したんだ」

「それは面白そうね。じゃあトミー、私も仲間に入れて。でも、私の好きな水泳もやるのよ」

「いいとも。ジャックはどう」

「大歓迎さ。ではラン、バイク、スイムの順でやってみよう!」

 ここはアメリカ西海岸カリフォルニア州サンディエゴ。太陽の光がさんさんと降りそそぐ海岸で、スポーツ大好き人間の若者たちが砂浜に寝そべり語らっていた。この海辺の町に集まってくる若者たちは、海で泳いだり、サーフィンを楽しんだり、砂浜を駈けっこしたり、仲間達とスポーツに興じるのだ。

 彼らの多くはスイマーやサーファー、ジョガー、サイクリストたちで、ソラーナビーチやパシフィックビーチと呼ぶ海で泳いで、そのまま砂浜をランニングし、また泳いでといった具合に、スイムやバイクやランをそれぞれ楽しんでいた。そのうち彼らは、自然発生的に3種目のスポーツを連続して行うようになり、3つ(トライ)の競技(アスロン)ということから”トライアスロン”と命名したのである。ハワイのアイアンマン大会が始まる5年余り前の1972年頃のことである。

 そして、ついに彼らは仲間同士でトライアスロン大会を開いた。1974年9月、サンディエゴのフィエスタ・アイランドにおいて、ラン8.5km、バイク8km、スイム0.55kmの競技が展開されたのである。「シャナハン&ジョンストン・ミッション・ベイ・トライアスロン」と呼ぶミニ・トライアスロン大会だった。競技というよりも気軽に、その場に集まった者同士で行うフィットネス・ゲームだったが、これが今日のトライアスロンの原型となったのである。

「やっぱりジャックにはかなわなかったわね。トミー」

「完敗といったところかな。スイムでも差をつけられたし…」

「確かにランではトミーにリードしたけれど、バイクのゴールの地点では、あともう少しで追いつかれそうだったよ。それにしてもキャサリンは泳ぎがうまいね」

「でも、たった500mほどでは、差はつかなかったわ。今度は距離を変えてやりましょうよ」

 仲良しの3人は息を弾ませながら、海岸の砂浜でいつまでも語り合っているのだった。
ちなみに、この大会の参加者は46名、優勝したのは55分44秒でフィニッシュしたビル・フィリップスだった。

※この物語は歴史的事実を踏まえながらも、ストーリー性を加味させるため、若干の脚色をほどこしています。
しかし、事実を歪曲したり、虚偽を記すことはありません。また、個人名はすべて敬称を省略しています。

トライアスロン談義:トライアスロンは人類の進化を表現している?

桜井晋(日本トライアスロン物語編集委員会主幹)

トライアスロンは人間の進化の姿を描く

トライアスロンは人間の進化の姿を描く

 サンディエゴの海岸では、必ずしもスイム~バイク~ランの順番で競技を行っていたわけではない。ランが最初の種目で、次にバイク~スイム、さらにランという順番で競っていたという説もある。
やはり今日のスイム~バイク~ランというトライアスロンの原型(順番)が確立されたのは、ハワイ・アイアンマン大会でのことだ。とはいうもの、ではなぜスイム~バイク~ランなのか?残念ながら、この三種目の順番を定めた理由は定かではない。競技の安全性を確保するためとか、運動生理学的にスイム~バイク~ランが最善など、諸説はいくらでもあるが、それは後世の私たちの考えに過ぎない。
私が知りたいのは、サンディエゴやハワイのアスリート達が、三種目の順番を決めた根拠だ。しかし、それは知る由もないので、私はよく人に聞かれたとき、次のように答えている。すなわち「トライアスロンは人間の進化の姿を描いています」と。
 三十数億年前の地球は、海が三分の一の面積を占めていたという。その海から生命体(バクテリア)が誕生し、やがて大陸へと上がっていった。そして、生命体のうちのひとつから人類が発生し、やがて原野を走り抜け、森林の高い樹木の上を住家とした。そして今から約四百万年前、人類は安全な大陸の上で直立二足歩行を始めた。
この海から陸へ上がり、二本の脚で歩むという過程こそ、まさしく人類の進化そのものであり、すなわちトライアスロンの姿なのだと??

今まさに人類の進化のスタート地点に立つ?!

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