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第99回コラム「どこへ向かうか大学生」

先日、何気にNHKを観ていたときボート競技の日本選手権が放映されていた。
競技人数は1人で行うシングルから8人で行うエイトまで、種目数もいろいろあり、学生や社会人選手が熱い戦いを繰り広げていた。
日大、法大、明治大など大学生選手が社会人チームと対等、いや対等以上に戦っていた。
社会人、大学生、それぞれトレーニングをすることの難しさがあると思う。
だがそういった状況であれ大学生選手が活躍する姿には、見ているものも興奮させる。
特に母校が参加していれば。

さてトライアスロンはどうだろう。
競技特性が異なる。
レベルアップに長い時間を必要とする。
練習環境が制限される。
そして何より指導者が圧倒的に少ない。
これらが大学生選手のレベルアップを阻む大きな原因であることは間違いない。

だがもっとも気になることが一つ。
それは学生選手がどこに最終目標を置いているかということ。
ほとんどの選手が最終目標を「学生選手権(インカレ)」に置いているという寂しい現実。
これではエリート選手に対抗できるはずもない。
大学生男子選手にとっては、この学生時代に「就職活動」という「将来を決める大きな作業」があるのだから仕方が無い面もあることは認める。
だが4年間という短い時間であるならばなおさら夢を大きく持って挑戦してほしいものだ。
「小さく」「現実的」な目標に満足してしまう姿には悲しさを覚える。

大学生だからこそ言える、大ボラのような大きな目標を打ち立て、大学生だからこそできる無茶な挑戦をしてほしいと願ってしまう。
過去を振り返れば、日大ウルトラ、東海大ボンバーズ、順天堂。
問題児が存在し、トラブルも起こしたが、その選手が大学全体を引っ張り大学の頂点に立った。
そしてその選手自らはエリート選手に食らいつき、日本代表の座を奪い取り世界に挑戦していた。

今は本当に素行の良い学生選手が多くなった。
それは悪いことではない。
社会人としても通用できるような常識をわきまえた選手が多いということだ。
その一方で、この選手なら何かをブチ壊し、何かを変えてくるとかも、と期待できる選手も激減してしまった。

大学選手権が、参加することが目的のお祭りイベントではなく、大学の頂点を狙う学生たちの勝負の場、そして世界への登竜門となってくれることを切に願う。
そのとき日本のレベルはワンランク上がることになる。

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【写真1】
スタート直前の女子選手。
優勝を狙う選手達だ。
既に、世界で戦っている高橋侑子選手のレベルは次元が違っていた。
2位もジュニア・エリート上がりの福田慶。

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【写真2】
男子のスタート前。
どの選手も真剣な表情だ。
その真剣さをもって普段のトレーニングから取り組んでほしいものだ。
そのときだけ頑張っても結果など残せる訳がない。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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