2026年7月10日、陸上競技のダイアモンドリーグ・モナコ大会。
2024年のパリ・オリンピックにおけるフランス代表にしてトライアスロン女子・金メダリスト、カサンドラ・ボーグランが恐るべき記録を打ち立てた。
3000mにおいて8分32秒86のフランス記録を出し8位に入賞。
田中希実選手の持つ日本記録が8分33秒52。
環境やライバル選手の状況、また目指すレースが違うなど細かい条件は異なるかも知れないが、トライアスロンの世界で金メダルを取るためには陸上競技で日本一になれる実力を持たなければ対抗できないという衝撃的な事実を見せつけられた。
イギリスの男子選手、アレックス・イー。
彼の5000mベストタイムは13分13秒89(現在)。
現時点において、この記録を日本人陸上競技選手のランキングに当てはめると6番手となる。
大迫傑選手と0.29秒差、設楽悠太選手より2.87秒速い。
東京オリンピック前に「フルマラソンで日本記録を更新したら1億円」という報奨金制度において、これを達成した2選手と同等の走力をアレックス・イー選手は持っている。
男子においても、日本のトップ陸上競技選手と同じレベルが求められている。
さてこの現実とどう向き合う。
ランだけでこの状況。
更にスイムも速く、バイクもプロロード選手なみに走る。
以前のコラムにも書いたが、アメリカ・トライアスロンの女子選手・テイラー・ニブはパリ・オリンピック自転車競技代表選手でもあり、自転車の金メダリストと同じスピードで走る能力を有している。
出場した自転車タイムトライアルでは落車のため大きな結果を出すことができなかったことは残念だ。
アメリカは一人の選手が2種目でオリンピックに参加することを許可した。
最近、日本でも異なる競技団体の連携を発表しているが、これを日本に当てはめた場合、どうなるだろうか。
恐らく2種目参加は認められないだろう。
だが世界の怪物選手たちは今までの常識を打ち破ってきている。
トライアスロンは1種目では通用しない選手たちが3種目を合わせることで勝負している、と言われた。
だが現在は大きく異なる。
過去にもオリンピック・スイマーも参戦している。
スイム良い、バイク良し、ラン良し。
その中で突出した武器をもっている選手が勝つ結果となっているのが現代トライアスロン。
苦手種目があってはならない。
トライアスロンも超人たちの世界に仲間入りだ。
その超人に立ち向かうために、日本選手は、日本チームは何を進めてゆくべきだろうか。
大きな課題に立ち向かわなければならない。
【写真1】
自転車競技のインターカレッジ。
この大集団の中でも普通に走れる技術がなければトライアスロンで安定した走り方はできない。
下りではこの密集状態のまま時速70km以上で走る。

【写真2】
震災や新型コロナなど様々な障害を乗り越えて、福島県いわき市で開催された高校生選手権。
少ない人数ながら白熱した戦いを見ることができた。
特に女子カテゴリーは出場人数をいかにして増やすかが大きな課題だ。
競争力が無ければレベルアップも遅れてゆく。

【写真3】
初めて群馬県で開催された関東リージョン合宿。
才能ある原石が存在するが、この選手たちをどうエリートまでつなげるか。
最大の課題は「優秀な指導者」の不足。
そして「練習できる環境の不足」だ。
特にバイク練習環境は厳しくなるばかりだ。

中山俊行プロフィール

中山 俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。
【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督





