オリンピックまであと2年。すでに2010年の苛烈なシーズンに向けて選手達のトレーニングは始まっている。さて私がトライアスロン指導のために役立てようと始めた格闘技。空手と柔道をミックスさせた総合系の武道・大道塾が現在のベース。殴る、蹴る、投げる、極める、締めるの「何でもアリ」の武道団体だ。現在は「空道」という名称で団体が運営されている。
SWIM、BIKE、RUNと3種目のバランスをどのように工夫してトレーニングするのか?
打撃、寝技、投げ技のバランスをどのように工夫してトレーニングするのか?
精神面以外にも学べることは多い。
昨年末に黒帯を取得するために試験(審査)を受けた。昇段審査は極真空手でも行われている「連続10人組手」。10人の選手と連続で組手を行い、その結果によって昇段か保留かが結論付けられる。組手はもちろん「ガチ」。中途半端に行えば病院送りの可能性もある。だいたい、その前に審判が止めてくれるので安全面の問題は少ないが・・・
システムとしては「一般カテゴリー」とは別に、「ビジネスマン」というトライアスロンでいうところのエイジグループも存在する。こちらは組手の内容を年齢に応じて加味し、休息時間があったり、対戦相手を調整したり、怪我を少なくするための配慮をしてある。
どちらかといえば「高齢者」に分類される私。カテゴリーでいえば完全に「ビジネスマン」であるが、どうしても「一般カテゴリーの黒帯」が欲しかった。指導者である中込英夫や小原工が日本選手権に出場して勝負をすると考えてもらえば良い。
ここまでは勇気ある考え方だ。自分を誇れる。
しかし安全面を重視する武道団体である以上は、無茶はさせないシステムが出来上がっている。一般であっても年齢に応じて連続組手の人数を減らしてゆくというものだ。私の年齢では5人の連続組手ということになる。
さて、ここで問題。
「一般カテゴリー」で受けると発言して黒帯を取得するのであれば、年齢区分も関係なく5名ではなく10名の連続組手をすべきではないのか!?読者のみなさんならば、どちら道を選ぶだろうか?
「10人でやるぜ!」と言うべきか、システムを甘受し5人とするべきか。
迷いに迷う。その過程において「怪我したら仕事に影響が出る」「年末年始に入院はできない(過去に経験している)」「仕事が忙しくて練習が十分に積めていない」などと様々な言い訳も頭をよぎる。見えないものへの不安感が増大してゆく。
結局、最終的には指導者のアドバイスに従い規定通り、5人連続組手として受審した。
だが、全てが終わると、「やはり10人やれば良かった」などと「寝言のような強気」が出てくる。逃げた気持ちを誤魔化すために、だろうか。
晴れて昇段し黒帯にはなることはできた。この昇段を「誇りあるもの」とするためには、今後のトレーニングの中でホンモノとなっていくしかない。引け目を感じているのであれば、それを誇れるように変えてゆくしかない。それは自身の努力以外では変えることはできない。
自分が競技を行う上で、どこに基準を置くのか。オリンピックという言葉を口にする以上はプライドと共に相応の覚悟をもって臨む必要がある。自分の中にある「プライド」がホンモノであることを証明できるのは自分自身だけだ。
(写真1)年末にJISSで開催されたナショナルチーム・ジュニア合宿。身体のトレーニングだけでなく頭のトレーニングも重要だ。「己を知る」ところからスタートする。彼らがホンモノになれるよう手助けすることが我々の役目。
(写真2)応援のチカラ。昇段審査応援のためだけに駆けつけてくれる人たちが居る。それだけで選手には大きなチカラが与えられる。応援はプレッシャーではない。勝利へのエネルギーなのだ!
中山俊行プロフィール
中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本の
トライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタート ライアス
ロン」。
【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督