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第158回コラム「海外遠征時のバイク梱包」

選手は海外遠征に行く。
レース参加にあたり多くの移動を伴う。
今においては海外を拠点としてトレーニングを日本に遠征に来る選手も存在する。
たくさんの荷物とバイク、スペアホイールを伴えた小さな引っ越しだ。

さて、その中でもバイク梱包は大きな作業。
選手としてはできるだけ楽をしたい。
簡単に梱包して、簡単に組み立てたい。
この気持ちは十分に理解できる。

だがトップ選手であれば「バイクがダメージを受けない」ということを最優先に考える必要がある。
だが「エリート」と呼ばれるトップ選手にあっても意識の差は大きい。

車輪を外したらそのままケースに入れて梱包できるタイプのバイクケース。
このケースを利用し今年のローザンヌに遠征した選手のうち2選手のバイクフレームが破損した。
1台はフロントフォームが折れた。
1台はシートステーにひびが入った。
過去の例も含め、フレームそのものにダメージを受けた例は少なくない。

これはバイクケースが悪いといっている訳ではない。
多くの移動を伴うバイクケースは慎重に選ぶべきという教訓だ。
このタイプのバイクケースは非常に大きくなるため車両移動の際、スペースを必要とする。
すなわち団体移動の際は荷物の積み合わせがし辛くなる。
レンタカーで移動するときにも、かなり迷惑だ。
コンパクトなケースであれば3-4台乗せられるスペースに半分の台数しか載せられないこともある。

また選手の利便性とは別に運ぶ業者にとっては迷惑なサイズであり、持ち上げる際にも非常に面倒なものとなっている。
そのため載せるとき、載せ替えるとき、運搬するとき、そのやり方は積込みを実行する者の気持ち一つで変わってくる。
海外の飛行場で働くプロレスラーのような体格が大きくパワーのある作業員にとっては積替えの際、放り投げたくなる気持ちも理解できる。

そのようなことからトラブルが多く発生しているのでは、と推察される。
バイクケースの良し悪しを語っているのではない。
国際感覚をもって移動する場合は、バイクの安全性を最優先とする必要があると伝えているのだ。

面倒であってもコンパクトな形となるようにし、しっかりと緩衝材を入れ、長方形の安定したバイクケースの方がトラブルは少ないのが実状だ。
そしてそれは組み立てるときにバイクの細部をしっかりチェックし直すことにもつながりレースでのトラブルを避けることにもつながる。
組み立て方が判らない、組み立てるのが面倒だ、ではトップ選手として情けない。
エリート選手と言われるのであればバイクの走り方同様、バイクの梱包作業においても十分な知識を持つ必要がある。

bikecase in Hamburg
【写真1】
コンパクトにまとめられたバイク。
バイクケースをそのまま背負える使用となっている。
WTSハンブルグにて。

 
 

broken handle
【写真2】
安易にバイクケースを選び、分解をせずに楽をしようとした結果、この写真のようになることがある。
国際輸送では想定以上の負荷がバイクに掛かかっている。
遠征先でこれを修理すること、付け替えることは非常に困難だ。

 
 

中山俊行プロフィール


中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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