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トシ中山の「渾身の一撃」第155回コラム「チームプレー、再び!!」

2019年アジア選手権。
日本チームとしてはアジアNo.1の座を死守する必要があった。
WTS(世界シリーズ)、WC(ワールドカップ)では思うような展開に持ち込むことは難しいが、アジア選手権においては間違いなく日本チームが主導権を握ってのレースとなる。
アジアのどの国も日本に勝つために作戦を立て挑んでくる。

過去にも日本チームとしての勝利を目指すためにチームプレーをアジア選手権においては実行してきた。
日本選手の確実な勝利と表彰台を確保するための戦略だ。
今後もこの戦略はアジア選手権においては実施してゆく予定だ。
自転車知識が豊富とはいえない日本のトライアスリートには、世界で戦う前段階において理解してほしい事項でもある。

戦い方のおもな進め方は下記の通りだ。
1. スイムで先行する選手が逃げ切ることを優先事項とする。
2. スイムで出遅れた選手は他の国の選手が前方グループを追いかけることを防ぐ
3. スイムで出遅れた選手が前グループを追撃する場合は、単独または日本選手のみのグループであることを条件とする
4. 前方で逃げる選手たちはそのグループの中で他国選手への対応を行う

しかし思うような結果につながらないことも多々ある。
問題点は下記の通り。
1.上記の戦略は理解しているが、実際どう動いて良いか判らない。
2.自分が勝ちたいという欲が出てしまい動きが中途半端になる。
3.他国の選手が日本チームの戦略に便乗し、日本チームがこれに対応しきれない。
4.根本的に他国選手の実力が上で対応できない。

今回、明らかに成功したのはジュニア男子。
スイムで男子3名が先頭グループでフィニッシュするが、バイクのスタートで日本選手2選手が抜け出す。
残った日本選手が後方集団のペースが上がらないよう睨みを利かす。
逃げる選手も大変だが、後方の選手の苦労は更に凄い。罵声を投げかけられ、唾を吐きかけられる。
スポーツマンシップなど感じられない行為があったようで抗議すべき事象があったと聞いた。
その選手が踏ん張ってくれた結果、バイクで逃げた男子ジュニア選手はランで追い上げられるも1,2フィニッシュを決める。
これこそ全員で勝ち取った表彰台だ。
JTU-HPの結果には詳細が記載されないが、こういったアシスト選手の功績を評価し、讃えてゆくことは必要だ。

しかしながら他のカテゴリーにおいては思うような展開に持ち込むことはできなかった。
エリートであっても十分な理解がされておらず対応できていなかった。
WTS、WCではチームプレーを行うことはないだろう。
残念ながら日本選手のバイク能力は世界レベルにおいては高くないからだ。
単純な走力が不足している、バイクに慣れていない、テクニックが十分でない、知識が不足している、体力がない、理由は様々だが、これらを学ぶチャンスを自らが作っていないことが最大の理由と考える。
自転車レースに出場すれば学べることがほとんどだ。
若き選手たちには一刻も早く自転車レースとは何かを経験してほしい。
トラックレースでもロードレース(マスドスタート)でも構わない。
勝負どころのキーポイントを理解し、集団の中でどう動くかを理解する。
そして瞬時に身体が動くように習慣付けておくことが必要だ。
頭でっかちでは勝利への道は開けない。

トラックレース
【写真1】
トラックレース。
この集団の中で自分の実力を出し切れる能力が必要。
前後左右の選手状況を把握し、自分のポジションを確保し、スピードの変化に対応しながら勝つためのチャンスを伺い、勝負所で仕掛ける。
練習だけでは学べない多くの要素が含まれている。

 
 

バイクレクチャー
【写真2】
自転車競技のレクチャー。
バイクでのポジションニングについて講習を行う。
エリート選手は基本的な部分は理解している。
だが実戦で実行するためには実力と知識のレベルアップが必要。

中山俊行プロフィール


中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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