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トシ中山の「渾身の一撃」第152回コラム 「スーパースピード、スーパーリーグ(上巻)」

トライアスロン・スーパーリーグを見にシンガポールへ行ってきた。
日本からは女子・高橋侑子選手、男子・古谷純平選手が出場。
2日間のフォーマットで開催される、この大会。
賞金が良いこともあり世界からも多くのトップ選手が出場している。
初日は「ELIMINATOR」と呼ばれるレース。
2日目は「ENDURO」と呼ばれるレース。

大まかではあるがスイム300m(1周)、バイク5km(5周)、ラン2km(2周)の距離で争れる。

初日の「ELIMINATOR」。
上記の距離で3レースが行われる。
最初のレースで15選手に絞られる。
2レース目で10選手に絞られる。
3レース目で優勝選手が確定。

最初は女子のレース。
スイムで良いポジションを取った選手はバイクでは様子見。
バイクコースが非常に狭くトリッキーなため安全を優先。
しかし通過がギリギリの選手は予選を通るため必死。
ランに自信があれば焦る必要はない。
この微妙な心理状態がレースの流れに影響する。
トップ選手は70%、ギリギリの選手は100%での走りとなる。
およそ10分の休憩を挟んで2レース目。
15選手と数が減ったことも影響し、今度は少し展開が変わる。
スイムは1レース目以上の全力。
バイクはランに自信のない選手が積極的に仕掛ける。
ランに自信のある選手はバイクでも大きな動きは見せない。
だがテクニカルなバイクコースではにおいては有力選手は常に前方ポジションを確保している。
コーナーリングテクニックとポジショニングが求められる。
日本ではお目に掛かれないコース設定だ。
最後のランはチカラ勝負。
でもトップ10に入れば良いので強い選手はここでも80%でOKだ。
約10分の休憩を挟んで3レース目。
トップ選手であっても、連続のレースで疲労感は強く決して楽ではない。
予選、準決勝はゆとりのあった高橋侑子選手もここでは厳しい表情となった。
最後はチカラ対チカラの戦い。
アメリカのザフィアエスが優勝した。

男子も同じフォーマート。
女子と決定的に違ったのはバイクのスピード。
狭くてカーブの多いコースを楽に走り抜けてゆく。
スイムでは問題なく対処していた古谷選手だがバイクでは余裕がない。
前の選手のトラブルに巻き込まれ集団から遅れてしまう。
最終的には落車によりレース終了。

古谷選手は日本のトライアスロン選手の中ではもっともバイクが走れる選手と言って良いだろう。
連戦の疲労や体調の問題があるにせよ、その古谷選手が苦戦したのだ。
これは他の日本選手が対応できない可能性を示している。
この事実をしっかりと捉えてほしい。

2018年WTS-GFゴールドコーストにおいてもテクニカルなバイクコースに日本選手の多くが苦戦し、集団から遅れていった事実がある。
バイクテクニックは男女共通の課題だ。
国内のレースで「バイクコースが難しい」「コーナーリングが苦手です」と言っている選手には2020東京オリンピックのチャンスはない。
なぜなら2020東京のバイクコースには1周5kmの中で約15回の90度コーナーと2回のUターン(360度)が含まれている。
これを8周回すれば、どういった状況になるか想像できるだろう。

レース会場
【写真1】
大会会場は風光明媚なヨットハーバー。
ヨットハーバーで開催されるケースは多いようだ。
リッチな感じを盛り上げるためか、コンパクトな大会運営に適しているのか。
 
 

バイクコース
【写真2】
日本であれば許可が下りないような細いバイクコース。
だが選手たちは普通に走りぬけてゆく。
自転車ロードレースの経験、クリテリウムレースの経験がない日本選手にとっては集団について行くこと自体が難しい。
よく「耐久レースに出場したことならある」と選手から聞くが、そこではスーパーリーグで役立つバイクテクニックの習得はできない。

中山俊行プロフィール


中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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