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第120回日々是修行

第120回コラム

日々是修行

【この記事の要点】

トライアスロンの最高峰「世界トライアスロンシリーズ(通称WTS)をNHKBS1で放送してもらえる。男子は私が担当して生中継解説を行った。
私は話すことが本職ではないが、トライアスロンについて話をするチャンスを与えられ、その魅力や面白さ、レースの緊迫感や選手の心理などを観ている人たちに伝えトライアスロンを多くの人に興味をもってもらえるようにする義務がある。
その期待に応えなければならないと思っている。

トライアスロンの最高峰「世界トライアスロンシリーズ(通称WTS)。
2015年は3月6日のアブダビ大会(UAE)からスタートし、9月19日のシカゴ・グランドファイナルまで全10戦が開催される。
このうち8戦をNHK BS1で放送してもらえる。
 
このうち5月16日の開催された横浜大会においては女子が関根明子(2000年シドニー五輪、2004年アテネ五輪・日本代表)、男子は私が担当して生中継解説を行った。
解説の出来具合については敢えて苦言を受けたいと思う。
周囲の人たちはOKというけれど、自分の中ではどれだけ多くのダメ出しがあったか数えきれない。
 
解説に先立ち、選手名の読み方、レース前の調子、天気、メンバーから推測される展開、選手の見分け方など事前の準備は必ず行う。
選手にとってレース前にトレーニングを行い、体調を整えるのと一緒だ。
できることは可能な限り行う。
しかし大きく異なるのはビギナーと同じく「付け焼刃」であること。
事前の準備は2週間程度。
 
言いたい言葉が出てこない(思うように体が動かない)。
焦って言葉が止まってしまう(慌てて呼吸が浅くなる)。
喋っていることばの発音がオカシイ(普段できていることができなくなる)。
何を話していたか混乱する(自分のレースができていない)。
 
競技に例えてもダメなレースをしたときと全く同じだ。
この点「プロ」のアナウンサーは違う。
一瞬の戸惑いも冷静に対処する。
突発事項についても一言一句に注意を払って発言する。
同じリズムで喋りながらも、レースのクライマックスに向けて強弱をつけてゆく。
アナウンサーが言う「ダメでした」と我々が言う「ダメでした」ではレベルが違うのだ。
 
確かに私は話すことが本職ではない。
だがトライアスロンについて話をするチャンスを与えられ、その魅力や面白さ、レースの緊迫感や選手の心理などを観ている人たちに伝えトライアスロンを多くの人に興味をもってもらえるようにする義務がある。
その期待に応えなければならないと思っている。
そのためにはプロを脅かすぐらいのレベルにならなければならない。
できていないのは事前のトレーニングが不十分なのだ。
ダメなのは覚悟が足りていないのだ。
素人として上手いと褒められ満足するのではなく、プロとして考えてもらった場合の評価で喜べる結果が必要だ。
 
 
競技もそれ以外の事にも同じことがいえる。
日々の過ごし方と覚悟。
これが自分自身の結果を左右する。

喋る「プロ」。
今回、トライアスロン放送に協力して頂いたNHKアナウンサー渡辺さんと飯塚さん。
他にも多くのアナウンサー、スタッフの方々に支えて頂きました。
長期間、長時間に渡るご協力、本当にありがとうございました。

横浜大会は完璧な運営と安全最優先の大会として評価されている。
一方、安全性を高めたがゆえ、コースが安直になってしまい実力の評価がし辛いレースにもなっている。
もし東京オリンピックでトライアスロンを横浜開催とするならば、バイクコースに港が見える丘公園への坂、元町商店街から登る急坂などの難所を取り入れることで世界各国の選手から更に高い評価を受け、世界レベルの競技コースとすることができる。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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