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第110回オリンピアンの新たな挑戦

2014年、日本トライアスロン連合の強化体制に新たな1ページが加わった。 トヨタ車体監督でもあり2013年国体(東京大会)優勝者・福井英郎が2020年東京オリンピックに向けてU23男子選手の強化に当たることとなった。
現段階で福井英郎に勝てる日本選手は片手ほどしか存在しない。
指導者としてより選手として戦った方が、日本男子の国別世界ランクは上がるかもしれない。
だが福井自身も、自分では2020年東京オリンピックでメダルを獲得することは不可能であることを認識している。
そのため自分を捨て、若手選手のために日本男子の強化を図る指導者となることを決意したのだ。

メインスポンサーであるトヨタ車体にとっては複雑な話だ。
スポンサーである以上、自身のチームの強化を最優先に考えてほしいと願うものだ。
福井が日本チームのコーチとなること・イコール・他のチームを強化することにもつながりかねない。
だがトヨタ車体トライアスロン部は福井監督がU23男子チームの監督となることを認めた。
それはトヨタが日本を代表する企業であり、世界を相手に戦ってきた企業であるからだろう。
日の丸のために個を捨て公に尽くす決断をしてくれた。
トヨタ車体に席を置きながら、強化選手に含まれている遠藤樹選手、谷口白羽選手は、この期待に誰よりも答える義務がある。

福井コーチより優秀な指導者は存在するだろう。
だが選手としての福井、コーチとしての福井を我々は知っている。
彼だけが持っている感性、彼だけが経験した戦い。
決して理論的ではないかも知れない。
決して数字的でないかも知れない。
だが勝負に賭ける心、ここ一番で力を発揮する能力、そして集中力が非常に優れていることを知っている。
だからこそ日本男子チームの強化を賭けるに相応しい指導者と多くのスタッフが賛同している。

2014年、すでに2回のU23男子合宿を開催した。
少しずつではあるが選手の意識が変わってきていることを感じている。
まだ時間は掛かるだろう。
しかし確実に戦う意思を持った選手が増えてきている。
残された時間は多くはない。
だがこの前進を止めずに進んでゆくことで可能性が見えてくる。
ここからの男子選手の変化を見届けてほしい。

IMG_20140501_実戦バイク_TRI-X宮崎シーガイヤで開催されたU23男子合宿においては一般道路を閉鎖して実戦練習を行った。 福井コーチに勝てなかった選手たちは何を思うのだろう。 ここからの奮起に期待したい。

P1130522_岩城会長

岩城会長が多忙の中、合宿を視察しに訪れてくださった。「いつもプラス思考でゆこう。」 「マイナスの言葉を口にしない。」

この2つの言葉を頂戴した。

選手もスタッフも、しっかり心に刻んでほしい。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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