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第108回コラム「歴史の積み重ね」

ソチ五輪での熱戦。
選手たちは日々熾烈な戦いを演じている。
実力以上の力を出せた選手、実力を出せないまま終了した選手、それぞれの選手にそれぞれのドラマがあることだろう。
だが冷静に見てみると「勝つために参加する選手」「ただ参加しているだけ選手」、大きく分けるとこの2種類の選手が存在する。
勝ったか負けたかは結果論でしかない。
だが戦う前の心構えはどうあるべきか。
言わずとも理解できると思う。
だが現実は「オリンピックに出場できた。あとは一生懸命頑張ればそれで良い。」という選手の姿が見られるのも事実。

これはトライアスロン界にも当てはまる。
日本トライアスロン連合では「メダル獲得」を目標として強化に取り組んでいる。
選手、指導者が同一の目標を目指して取り組んでくれていることを強く願う。
「強く願う・・・」という発言に対して無責任に感じる読者も居るだろう。
我々は目標達成に向けて活動している。
嘘、偽りはない。
だが戦うのは選手自身。
その選手が本音でどこまでこの目標を達成しようと考えているのかは残念ながら判らない。
各チームについても同様のことが言える。
「オリンピックに出場すること、させること」で自分の人生に箔を付ける、自分のチームに存在感を持たせる、自分の生活を維持継続する、など「勝つこと」よりもこちらに優先順位をもって取り組んでいる選手・指導者が存在していることも事実。
だからこそ本気の選手を代表として選出できるような基準を作る必要が出てくる。
選手強化と共に、選考基準は各競技団体にとって本当に難しい作業なのだ。
本当に強い選手を代表として、その選手が本気でメダル獲得を目指して挑んでゆく。
これを実現するためには高い意識を持つ指導者が何世代にも渡って選手に繰り返し伝えてゆく必要がある。

さて昨年、チームケンズが25周年、そして稲毛ITCが20周年を迎えた。
自身が選手をしながらチームを作り、選手兼指導者として活動を開始した飯島健二郎率いるチームケンズ。
トライアスロンがまだオリンピック種目ではなかった時期から戦い続け、現在は愛弟子をオリンピックへと送り込み続けている。
選手として才能を持ちながらも若くして引退し、日本国内で誰よりも早くプロ指導者として活動を開始した山根英紀率いる稲毛ITC。
こちらも2000年シドニー五輪から2012年ロンドン五輪まで全てのオリンピックに選手を送り込み続けている。
この2チームを中核として日本のトライアスロン強化は進んできた。
そしてこれらのチームを倒すべき新たなチームも名乗りを上げてきている。
新旧の争いがレベルを引き上げ、目標達成に向けての近道であると考える。
以前のコラムでも伝えた通り、ライバルの存在こそが重要だからだ。

歴史を積み重ねることで競技は熟成されてゆく。
だが目標設定が低いままで歴史を積み重ねていってもレベルアップは望めない。
常に高い目標を持ち、その目標に向かって進もうとする強い意志を持ち続けること。
そういった歴史の積み重ねが、不可能と思われることを可能にするのだ。

我々は、トライアスロン種目の初のメダル獲得に向け2014年も歴史を積み重ねる。

【写真1】14年強化認定記録会2月3日、強化認定記録会。

世界シリーズ、ワールドカップに参加する選手の力量を図り、選考をする。
JTU岩城会長自らが視察に来てくれた。
日本トライアスロン界が大きな歴史を作る瞬間を楽しみにしてくれている。

【写真2】U19合宿英語コミュニケーション

2013年第2回U19合宿。
選手によって意識レベルはバラバラ。
意識の高い選手で合宿をするのか、意識を高めるために合宿をするのか、その方向性で内容は変わる。
今回も後者を目的とした合宿として開催した。
選手層が厚くなれば前者を目的とした合宿に変えることができるだろう。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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