オークランドで開催されたジュニア世界選手権(女子)において松本文佳選手が見事に優勝を果たした。
更には小原すみれも7位に入賞を果たし、ジュニア男子においては前田凌輔選手が7位に入賞した。
なんとジュニア・カテゴリー出場6名のうち3人が入賞を果たした。
快挙ともいえる。過去に、ユースオリンピックでは佐藤優香選手が、ワールドカップでは田山寛豪、井出樹里、上田藍選手が、センターポールに日に丸を掲げるという偉業を成し遂げている。
しかし今回は、ジュニアとはいえ純粋に「世界一」というタイトルを獲得した意味は大きい。これは松本文佳本人の努力の成果であることは間違いないが、チームJAPANとしてジュニア選手とU23選手達、スタッフ達の全員が一丸となって支え合い、戦った結果であるとも言える。
もちろん直接の指導をしてきた内山勇コーチの役割に負うところも大きい。
今回は「悪天候」という要素が、日本選手にとってはプラスに働いた。
BIKEでのリスク回避を優先するためにBIKEのペースは速いとは言い難かった。
快晴の日に開催されたのであれば全く違った結果になっていたかも知れない。
しかし、この結果を純粋に嬉しく思っている。
賞賛してあげてほしい。
結果を出した選手達を褒めてあげてほしい。
そして皆で喜んでほしい。
そして次のステップに進んでゆこう。
だが油断は禁物だ。
次も同じ展開にもってゆけるとは考えられない。
今回、海外選手に比べひと際小さい日本人選手は全くノーマークだった。
次回は必ずマークされ、警戒されるだろう。
浮かれて良いのはせいぜい2週間。
そこから新たな戦いをスタートさせなければタイトルは守れない。
エリートにおいては、田山のSWIM、井出のRUNが世界と互角に戦えることを証明してくれている。
今回の世界選手権では、小原すみれのSWIM、松本文佳のRUN、前田凌輔のSWIMがジュニアの世界では十分に通用することが証明された。
具体的な目標達成者が存在する訳だから、各カテゴリーの選手は、まずそこを目指してトレーニングをしてゆけば良いのだ。
近未来のトライアスロン競技において「苦手種目」を存在させてはならない。
苦手と思った種目で必ず置いてゆかれる、またはダメージを与えられる。
「全部得意だけれど、特に○○が得意!」
こう言える選手を目指してゆく必要がある。
過酷な時代ではあるが、松本選手の世界一は日本選手にも大いにチャンスがあることを実証してくれた。
世界一という大きな称号を手にした、小さな王者をこれからも応援していってほしい。
【写真1】
ワンチャンスを生かして世界王者になった松本文佳。
その一瞬を生かせなければ勝利を手にすることはできなかった。
昨年の世界選手権では完走することすらできなかった彼女は今年、一瞬のチャンスを見事に生かしきった。
天国と地獄の差は紙一重なのだ。
【写真2】
女子エリートの先頭を引っ張る井出樹里。
序盤から先頭を引き続けるレースは暴走とも言えるかもしれない。
だが彼女本来の持ち味を生かした非常に良いレースを展開した。
こういったレースがジュニア選手の意識を変え、レベルを上げてゆく。
中山俊行プロフィール
中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。
【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督