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第98回コラム「祭りのあと=スタートのとき」

ロンドン五輪トライアスロン競技、残念ながら目標を達成することはできなかった。
女子は足立真梨子の14位、男子は田山寛豪の20位が最高順位という結果に終わった。
レース前、選手はもちろん、スタッフにも目標を達成できる自信はあった。
それだけのトレーニングは積んできた。
事前のレース予測や展開、タイム設定なども大きな誤差はなかった。
しかし何かが足りず、何かが十分でなかった。
私自身、オリンピックチームの一員としてこの結果を重く受け止めている。
批判や非難は甘んじて受けよう。
だが選手は全力を尽くして戦った。
この事実だけは認めてほしい。
これからスタートする新たな4年。
原因を見極め、更なる対策をしてゆくことだけが「夢の実現」へとつながる。

さて気が付けば夏も終わり。
まだまだ暑さが続いているけれど、大会のピークもそろそろ後半に向かっている。
日本選手権、世界選手権、ハワイ・アイアンマンなどトップ大会はこれから本格化するが、私を含めビジネスアスリートが参加できる大会は徐々に少なくなってゆく。
2012年を思い残すことなく、最後の戦いに挑んでほしい。

夏バテの身体を癒し、正しい食事と睡眠で回復を図り、そして仕事の合間にしっかりトレーニングをしてゆく。
もちろん家庭サービスも怠れない。
ビジネスアスリートは、エリートアスリートと同等に大変なのだ。
だからこそここ最近、トライアスロンに挑むビジネスマンが注目を浴びているのだろう。
既に何冊かの本も出版され、目にした人たちも少なくないと考える。

突き詰めれば、エリートアスリートもビジネスアスリートもその軸となるのは「信念」であり「心の強さ」なのだ。
「やるぞ」と決めたことをやり抜く意思、どんな時でも挑戦し続ける不屈の心。
自分で決めた課題を達成できた人が強くなれる。
もちろん半分達成した人も半分は強くなる。
3種目における技術は確かに大切だが、心の強さや信念のない選手は、どれほどトレーニングを積んでも決してトップに立つことはない。
ジャパンカップでも、自称エリート・トライアスリートが撃沈している姿を目にする。
調子が悪いこともある。他の選手に負けることもあるだろう。
これは仕方が無い。
だが敗北を笑って誤魔化し、言い訳ばかりをし、それでも格好をつけることだけは忘れない。
こんな選手が「オリンピックが目標です」という発言をしている姿を見ると腹立たしいやら、悲しいやら。

勝てない選手にはそれなりの理由があるのだ。
それに気づかない限り、その選手に「勝利は訪れない」。
身の程を知ってこそ、レベルアップが可能になる。
繰り返し伝えるが、「謙虚さ」や「感謝の気持ち」はトップアスリートになるためには不可欠なものなのだ。
それをなくして頂点に立つことは有り得ない。

ロンドン・オリンピックが終了した「今」がまさにリオ・デ・ジャネイロに向けたスタート。
歴史を作るのは誰だ!!!

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【写真1】
オリンピック前に参加するはずだった滝行。
残念ながら参加できず、空手仲間が、私に代わってメダル獲得に向けて祈願をしてくれた。
今年は雨量が多くて例年以上のハードさだったとのこと。
終了後はビールで十分なエネルギー補給をしたらしい。

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【写真2】
U15合宿の1コマ。
テーマは自転車のメンテナンス。
自転車は、命を載せて走る自分の相棒。
自分でしっかり整備をしておくことは当然のこと。
パンク修理ができない選手、輪行のための分解ができない選手に、「強化指定」の称号は不要だ。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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