世界選手権とアジア選手権のチケットを勝ち取ったのは、高橋侑子と椿浩平。どちらもジュニア世代から活躍する生粋のトライアスリートだ。
酒田大会だけでなく、6月5日ジャパンカップ天草大会、同月26日ジャパンカップ蒲郡大会がU23日本代表選考対象レースとなっていた。
天草でも前述の高橋侑子は良いレースを見せ、男子は遠藤樹が好レースを見せた。
蒲郡においては古谷純平が、しぶといレースを見せた。
3戦全てにおいて活躍した高橋侑子であったが、それでもジャパンカップ蒲郡大会ではナショナルチーム選手との実力差をまざまざと見せつけられた。
世界に目を向けてみると、現在、世界のトップを走る、A.ブラウンリー、弟のJ.ブラウンリー、女子ではP.フィンドレーは、かつてU23カテゴリーで活躍し、エリートへ戦いの場を移しても、すぐにトップクラスで戦いを演じている。
白人系と比較して、成長度合いが比較的緩やかな日本人の若手選手(U23&ジュニア)に多くを望むつもりはない。体格や身体の成長速度が遅いためにレースで勝てないことは仕方ない。だが、精神面や心が劣るから負けてしまう、ということは避けなければならない。
簡単に折れてしまうような心では、身体がいくら成長したところで、勝つことなどできるはずがない。
だからこそ、若い世代の選手には、心の強さを見せつけてくれるようなレースを期待したい。
ジュニアやU23の時期は、世界と互角に戦ってゆけるベースを作り上げる時期。
最も求めたいことは、基本練習と心の強化だ。
U23の日本代表選手は間もなく発表されるだろう。代表となったからには、自分自身に恥じないレース、そして日の丸の重みを自覚したレースをしてほしい。
それができなければ日本代表として、海外のレースに出場しない方が良い。
今回の選考に当たり、「参加枠があっても戦える選手以外は選考しない」「観光気分の選手は派遣しない」ということを事前に強く伝えた。
戦う意思の薄い選手、勝とうという意思の弱い選手が同じチームに存在すると、チーム全体のレベルが低下してしまうからだ。
選手に厳しいことを求める以上、我々スタッフも真剣に取り組まなければならない。
まずは「勝とうとするチーム」を作り上げてゆくことが日本の緊急課題だ。
それができてこそ、その先に「勝てるチーム」作りがある。
個人戦のイメージが強いトライアスロンであるが、世界を相手と考えた場合、チームのチカラがものを言う。
【写真1】U23日本最強の座を獲得した高橋侑子。「世界で戦うチケット」を手にした。
ここから彼女の「世界で戦う本気度」が試される。
【写真2】こちらはジュニア日本代表の座を獲得した知花果林。ドラフティング不許可レースで開催された蒲郡大会(スプリントの部)で圧勝。8月7日のジュニア選手権でもしっかり優勝し、「日本」を背負い世界で戦ってきてほしい。
【写真3】大学生からトライアスロンを始めた場合、スイムがネックとなることが多く、オリンピックに到達することは難しい。
そこまでで「諦めるのか」、それとも「しつこく挑み続けるのか」。
神奈川大、専修大、立命館大のしつこい選手達。どこまで世界に近づけるか楽しみだ。
【写真4】エリートレースに積極的に参加する大学生選手達。彼ら大学生にこそ日本のU23カテゴリーをリードしてほしいものだ。
そのためには良い指導者を増やすことがJTUには求められる。
中山俊行プロフィール
中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。
【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督