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第89回コラム「U23日本代表選手選考。我らが期待するもの。」

2011年6月19日、震災の影響に配慮しつつも山形県酒田市はトライアスロン大会の実施を決断。U23(23歳以下)選手のみによる、第1回のU23選手権が開催された。U23選手権・酒田大会の優勝者には世界選手権とアジア選手権の日本代表のチケット、2位と3位の選手にはアジア選手権への日本代表チケットが渡される。
世界選手権とアジア選手権のチケットを勝ち取ったのは、高橋侑子と椿浩平。どちらもジュニア世代から活躍する生粋のトライアスリートだ。

酒田大会だけでなく、6月5日ジャパンカップ天草大会、同月26日ジャパンカップ蒲郡大会がU23日本代表選考対象レースとなっていた。
天草でも前述の高橋侑子は良いレースを見せ、男子は遠藤樹が好レースを見せた。
蒲郡においては古谷純平が、しぶといレースを見せた。
3戦全てにおいて活躍した高橋侑子であったが、それでもジャパンカップ蒲郡大会ではナショナルチーム選手との実力差をまざまざと見せつけられた。

世界に目を向けてみると、現在、世界のトップを走る、A.ブラウンリー、弟のJ.ブラウンリー、女子ではP.フィンドレーは、かつてU23カテゴリーで活躍し、エリートへ戦いの場を移しても、すぐにトップクラスで戦いを演じている。

白人系と比較して、成長度合いが比較的緩やかな日本人の若手選手(U23&ジュニア)に多くを望むつもりはない。体格や身体の成長速度が遅いためにレースで勝てないことは仕方ない。だが、精神面や心が劣るから負けてしまう、ということは避けなければならない。
簡単に折れてしまうような心では、身体がいくら成長したところで、勝つことなどできるはずがない。
だからこそ、若い世代の選手には、心の強さを見せつけてくれるようなレースを期待したい。
ジュニアやU23の時期は、世界と互角に戦ってゆけるベースを作り上げる時期。
最も求めたいことは、基本練習と心の強化だ。

U23の日本代表選手は間もなく発表されるだろう。代表となったからには、自分自身に恥じないレース、そして日の丸の重みを自覚したレースをしてほしい。
それができなければ日本代表として、海外のレースに出場しない方が良い。

今回の選考に当たり、「参加枠があっても戦える選手以外は選考しない」「観光気分の選手は派遣しない」ということを事前に強く伝えた。
戦う意思の薄い選手、勝とうという意思の弱い選手が同じチームに存在すると、チーム全体のレベルが低下してしまうからだ。
選手に厳しいことを求める以上、我々スタッフも真剣に取り組まなければならない。
まずは「勝とうとするチーム」を作り上げてゆくことが日本の緊急課題だ。
それができてこそ、その先に「勝てるチーム」作りがある。
個人戦のイメージが強いトライアスロンであるが、世界を相手と考えた場合、チームのチカラがものを言う。

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【写真1】U23日本最強の座を獲得した高橋侑子。「世界で戦うチケット」を手にした。
ここから彼女の「世界で戦う本気度」が試される。

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【写真2】こちらはジュニア日本代表の座を獲得した知花果林。ドラフティング不許可レースで開催された蒲郡大会(スプリントの部)で圧勝。8月7日のジュニア選手権でもしっかり優勝し、「日本」を背負い世界で戦ってきてほしい。

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【写真3】大学生からトライアスロンを始めた場合、スイムがネックとなることが多く、オリンピックに到達することは難しい。
そこまでで「諦めるのか」、それとも「しつこく挑み続けるのか」。
神奈川大、専修大、立命館大のしつこい選手達。どこまで世界に近づけるか楽しみだ。

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【写真4】エリートレースに積極的に参加する大学生選手達。彼ら大学生にこそ日本のU23カテゴリーをリードしてほしいものだ。
そのためには良い指導者を増やすことがJTUには求められる。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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