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第77回コラム「トライアスロン・シーズン開幕」

宮古島大会が無事に終了。選手のみなさんお疲れさまでした。
「完走した選手全員が勝者である」。いつまでもトライアスロンの原点を忘れずにいてほしい。一方で、ワールドカップ、そして世界選手権シリーズが開幕した。
オーストラリア、メキシコ、日本、韓国と序盤戦。そして6月のスペイン大会からいよいよオリンピック・ポイントの掛った本格的な戦いが始まる。有力選手が本気になるのは、ここからだ。世界選手権シリーズへの出場資格を獲得できていない選手にとっては、そこまでに「出場のためのポイント」を稼ぐことが求められる。

さて日本は「女子はメダル獲得、男子は入賞」をロンドン五輪への目標として掲げた。マスコミ向けや、関係団体に向けた実現性の薄い「取れたら良いな」「賞をもらえたら嬉しいな」という希望的な観測の目標ではない。現実性のある目標なのだ。

オリンピックを目標と公言するのであれば、そのことを自覚した上で、レースに臨んでほしい。それは選手だけでなく指導者にも当てはまる。オリンピックに出場経験のある選手は男子で6名、女子で6名。直接指導に係ったコーチは5名。ワールドカップ、世界選手権シリーズに目を向ければ表彰台経験者は男子が2名。女子が7名。現実味をもって取り組めといっても難しいかも知れない。だが仮にも「世界一」を目指して戦おうとするのであれば、選手も指導者も相当の覚悟をもって取り組まなければならない。

全国に点在する強化チーム。どこのチームの指導者も選手も必死になって戦っていると思う。だがワールドカップも世界選手権シリーズも参加枠は限られている。「真剣に頑張っているから出場できる」というレベルではない。
オリンピックをみてみよう。出場選手は全員が頑張って、その国の代表とし出場を果たし、本番でも真剣に戦っているはずだ。
だが金メダルは1つしかない。その一つを競り合って、奪い取る戦いなのだ。いくら本人が頑張っているといっても、それを上回って頑張っている選手が存在している。それが理解できない選手、指導者は真剣勝負の世界に足を踏み込まない方が良いだろう。「頑張っているから」「真剣だから」は当たり前のことでしかないのだ。
だからこそ、「どこに目標をおいてトレーニングするか」が非常に重要なのだ。

アイアンマンにおいても同様だ。エイジグループ選手の躍進は凄まじい一方で、エリートに目を向けて見ると、宮塚英也、村上純子を最後に表彰台とは無縁になっている。プロとして多くの選手が挑戦するが、ここ最近で20位以内に入ったのは今泉奈緒、塩野絵美以外には名前を聞かない。男子では昨年、桑原寛治が久しぶりに可能性を見せてくれた。宮古島ではハズしてしまったが、真価が問われるのはこの後だ。
彦井浩孝氏著の「アイアンマンの作り方」に過去20年のレベルアップ比率が記載されている。なぜエリート選手が伸びないのかヒントを得られるかもしれない。

もはや選手一人で世界に立ち向かうことには限界がきている。「生活」という大きな問題が最大の障害であるが、よりレベルの高い指導者の育成が待たれる。
選手と指導者の両者が真剣勝負で臨まなければ世界に届くことはできない。若手選手同様、若手コーチの奮起を期待したい。

(写真1)守澤選手&高森選手

(写真1)守澤選手&高森選手

(写真1)
明治大学自転車部の指導者だった時代の選手達。卒業後、競輪選手となり競技を続けてくれているのは嬉しいことだ。まだ新人であるが今後の活躍に期待したい。

(写真2)石井選手

(写真2)石井選手

(写真2・ガールズケイリンHPより)
同じく自転車部時代の教え子が卒業後も競技を続けガールズケイリンで王者に君臨している。石井寛子は自転車競技でのオリンピック出場を目指す。自転車競技の指導者時代は、長距離よりもむしろ短距離選手の指導に時間を費やした。アジア王者、全日本王者、学生王者は育てたが世界王者を作り上げることはできなかった。

(写真3)チームブレイブ

(写真3)チームブレイブ

(写真3)
チームブレイブ。八尾監督が若手選手を育成し、世界制覇を目論む。彼らがどこまで伸びるのか。礼節を重んじる八尾イズムを浸透させることが第一歩。真中の選手が豊崎大会優勝者・前田隼矢。

(写真4)未来の女子有力選手

(写真4)未来の女子有力選手

(写真4)
こちらは未来の女子有力選手。蒔田、加後、小原の14歳トリオ。指導者のもとで基本をじっくりと作り上げてほしい。内山コーチ、福島コーチの役割は重要だ。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本の
トライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタート ライアス
ロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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