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第224回コラム「コーチがいない!!」

前回のコラムでレベルの高い選手を育成してゆくためには、レベルの高いコーチを育成することが重要であることを伝えた。
さて日本国内の現実に目を向けてみよう。

どのレベルの指導者であったとしても学び続けなければならない。
これは基本。
普及に向けた指導者の資格保有者は増えた。
エイジアスリートや初心者アスリートをサポートできる指導者の増加は普及においては非常に重要だ。
またNCSで戦うエイジ・トップ選手を指導できる指導者も徐々にではあるが増えてきている。
統括団体であるトライアスロン・ジャパンにおいては、ジュニア、キッズの安全な指導、育成、強化ができる指導者をJOC、JSCの力を借りながら継続的に育成してきた。
同時にナショナルコーチアカデミーを通じて強化の中核を担う指導者の育成も行ってきた。

トライアスリートは個人競技であり選手個々の意向が強いため指導者不要という選手も少なくない。
それはそれで構わない。
安全かつ他者に迷惑を掛けることなく競技に取り組んでいるのであれば問題はない。
だが危険行為や迷惑行為を指摘してくれる協力者が不在であることは思わぬリスクを発生させることがある。
是非、注意して取り組んでもらいたい。

また自称「プロコーチ」としてSNSや現実社会で活躍している指導者も存在する。
知識や技量については怪しい部分もあるが、こちらもリスク管理が十分であり、誰もが理解できる常識に沿って指導しているのであれば、競技普及をしている協力者として考えることもできる。
指導力の有無ではなく「その指導者が好きだから」という理由で、指導者を選ぶ選手が居たとしてもそれは認めるべきなのだろう。
できれば正しく資格を取得してもらいたいと考えてはいるが。

さてホンモノの指導者の話に戻ろう。
特にここでは「エリートとして世界で戦う選手を育成する指導者」について考えてみたい。
非常に残念なことではあるが、日本国内には「オリンピックで活躍できる選手の指導」「世界選手権で上位に入れる選手の指導」ができる指導者は非常に少ない。
片手で余るほどだ。
かくいう私も今となってはそのレベルに居るとは言えない。
非常に厳しい現実だ。
世界で戦いたいと望む選手を、的確に指導できる指導者が存在しなければ、そのレベルまで引き上げることなどできるはずがない。

選手だけが全力で戦ったとしても、世界のレベルに到達することはもはやできないのだ。
前回のコラムで伝えたが、本当の世界のレベルを知らなければ「アジアで勝つ」と「世界で通用する」の区別もできるはずがない。
オリンピックを現場で見ずして、その空気感を知ることなどできない。
エリートのWTCSグランドファイナルを現場で見ずして、その戦いを知ることなどできない。
画面越しで観たところで理解できないことだらけだ。
リザルトの数字だけ確認したところで、現実のスピードと強さを感じることはできない。

選手の育成・強化と共に今、最も必要なことは「世界のレベルで戦える選手を育成したい」と考える指導者を育成することだ。
世界を目指す指導者が、指導で生活できる体制の構築が急務である。
夢を叶えるためにはトップ選手のみならずトップ指導者を増やしてゆくことが重要なのだ。
選手も指導者も世界に出て行かず、世界レベルで戦うことはできない。

 

【写真1】
JSPO公認トライアスロンコーチ3の講習会。
毎年、ウエイトトレーニングの指導をしてくれている日本トレーニング指導者協会の油谷指導員と栗若指導員。
毎年、情報をアップデートして協力してくれている。
202612宮崎コーチ3_1

 

 

 

 

 

 

 

【写真2】
トライアスロンにおけるバイクレベルは差が開く一方だ。
世界トップの大会で互角に走れる走力・技術を指導できることが必要。
パワーデータは大きな目安だが、コーナーを曲がることが下手、ギアを変えるタイミングがオカシイ、集団走行でストレスを感じるなどの基本技術の欠落が大きな課題だ。
Paris_BIKE3 (1)

 

 

 

 

 

 

 

中山俊行プロフィール


中山 俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督

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