私のコラムでも繰り返し伝えている、この言葉。
JOCでも最初に伝える内容の一つ。
指導者の姿勢を問う内容だ。
スポーツだけをしていれば良い。
スポーツの成績が良ければ勉強ができなくても問題ない。
スポーツで結果を出せば推薦がもらえるから受験勉強は不要。
スポーツ指導なんて自分の経験則で対応できる。
最終的に気合、根性、才能が重要で、これらがあればスポーツで結果を出せる。
昭和時代にはよく聞いた言葉だ。
だが残念なことに平成を超えた令和の時代にも残っている。
どの競技団体も「学ぶ必要性」を全国の各地域まで浸透させることは非常に難しい。
それでもハラスメント問題を含めて学ぶ機会を作り、できるだけ多くの人たちに機会を作ろうとしている。
我々のトライアスロンは比較的歴史が浅いこともあり、このような活動には積極的だと感じる。
だが学ぶ側の姿勢も大きい。
学ぶことは時間が取られる。
面倒くさい。
自分の経験則の方が優れている。
レース経験が豊富な自分には必要ない。
他人にアレコレ言われることは気分が悪い。
学ばない理由を羅列すれば果てしない。
ちょっと強くなると勘違いをする。
ちょっと目立つ選手を育成すると勘違いをする。
選手も指導者も同じ傾向がある。
なぜなら指導者は選手上がりのケースが多いからだ。
「感謝の気持ちと謙虚な心」
これを持つことを繰り返し伝えてきている。
しかし新たに注目された選手、新たな指導者にとっては初めて聞くこの言葉。
選手の時代にしっかりと学んでもらえれば、道を外れることは少ない。
だがトライアスロンの指導者はまだまだ発展途上。
だからこそ身体や技術を高めることと併せて心を育てる必要がある。
自分勝手な指導者のもとでは、自分勝手な選手しか育たない。
だが逆を言えば、選手時代にしっかり学んでおけば、優秀な指導者になるための事前準備ができているともいえる。
スポーツ理論、トレーニング技術は日々変わってゆく。
どれが正解で、どれが不正解であるかは学ばなければ分からない。
ネットやYoutubeで動画を観ることは悪くないが、全てを鵜呑みにすると痛い目にあうだろう。
玉石混合の中から本当の宝を見つけ出すためにも「学び」は必要だ。
ホンモノを見抜き、見つけ出すためにも学び続けなければならないのだ。
【写真1】
次世代合宿の一コマ。
飛行機滑走路を使用してのバイク練習。
素晴らしい環境のもとトレーニングができることに感謝できるか否か。
精神的な強さはこのような蓄積の中から育まれてゆく。
【写真2】
雨のWTCS横浜大会。
直前にコースが変更となり選手は戸惑ったことだろう。
運営サイドも大きな困惑の中で決断を下し、ベストではないが、ベターな選択の元、大会を開催した。
中山俊行プロフィール
中山 俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。
【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督