TOP > 連載コラム > トシ中山の「渾身の一撃」 > 第216回コラム「アジアと世界の違いを知っておくこと」

第216回コラム「アジアと世界の違いを知っておくこと」

次世代選手は言う。
世界と戦いたいと。
素晴らしい目標だ。
高き目標をもつ海外初心者の若手選手が行く場所といえば、まずはアジア地域となるケースが多い。

日本語が通じない。
それなりの飛行機移動がある。
英語ベースでの競技説明会から会場においても英語によるやり取り。
しかしながら食物は比較的馴染みがありストレスは少ない。
だがレース運営には課題も多く、直前の変更も少なくない。
会場でのストレスにどのように対応するのか。
こういった事象の全てが世界を目指す次世代選手にとっては良好な経験となる。
ここまでは問題ない。

レースに出場する。
アジアでは最強ともいえる日本を代表する次世代選手である。
コンチネンタルカップ(CC)レベルでは入賞することは珍しくない。
優勝には届かなくても入賞は比較的容易な目標だ。
アジアで戦い、結果を出す。
第一歩目としては非常に良い。
第一歩目としては、だ。

アジアで上位に入れる=世界で通用する。
ここで勘違いが発生する。
アジアと世界のレベルは大きく違う。
残念ながらアジアは5大陸の中でのレベルは低い。
この事実を理解することなく、勘違いしたままヨーロッパや北米のレースに臨む。
そして全く通用しないことに初めて気づく。
これは選手だけではない。
指導者や関係者にも同じ感覚がある。
本当の意味で「世界で戦う」ためには、このレベル差を正しく理解しなければならない。

今や世界トップクラスの選手たちは水泳、自転車、ランニング、いずれの種目においても日本選手権に出場できるぐらいのレベル。
具体的な差が分からなくても参加標準タイムを考えれば、どれほどのレベルか理解できるはずだ。
この現実にプラスしてトランジションや種目の切り替えというテクニック、そして駆け引きという経験が求められる。

都合の悪い事実から目を背けてはイケない。
事実を認め、自分の実力を冷静に判断し、トレーニングに取り組むことが求められる。
世界の頂点ははるか彼方だ。
だが真剣に進み続けることで世界への道は拓けてくる。
才能があるからこそ海外で戦うチャンスを得ることができている。
せっかく才能があるのだから格好だけのファッションアスリート、レベルの低い自称プロアスリートとなって欲しくない。
覚悟を決めた選手だけが、本当の意味で世界と戦う資格を有している。

 

【写真1】
指導者としての評価を得ることは容易ではない。
ミズノメントール賞を村上晃史コーチが受賞。
トライアスロン界にとっては朗報だ。

mizunoメントール賞_コージ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【写真2】
ミズノスポーツライター賞の選考委員長は何と草創期のトライアスリート河野通和氏。
トライアスロンという言葉も知られておらず、老若男女年齢問わず全員が仲間だった時代だ。
トライアスロンの歴史を知る貴重な人物との話はとても楽しかった。

河野_ミズノ賞

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中山俊行プロフィール


中山 俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督

Copyright © 2015 Neo System Co., LTD. All Rights Reserved.