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第212回コラム「自転車競技との連携」

2028年、2032年に向けた新たなJTU強化体制が発表された。
エリートのヘッドコーチを川合貴紀氏、次世代ヘッドコーチとして田山寛豪氏。
パラチームは福井英郎氏がヘッドコーチとなり菊池日出子コーチがこれをサポートする。
アイアンマンやデュアスロン、アクアスロンの強化を図るトップとして平松弘道氏がその職を担うことになった。
悲願のメダル獲得に向けて新たな体制でスタートする。
読者の皆さまには是非、期待をもって応援して頂きたい。

トライアスロン3種目の中でもっとも苦戦している競技は何だろうか。
スイムはニナー賢治選手、北條選手などWTCSにおいて先頭グループで上がってくることは珍しくはない。
バイク競技において第1グループでフィニッシュするシーンも珍しくない。
だがランニングで大きな差が出る。
ランが弱いのか。
これも一つの事実。
だが最も大きな問題はバイクのレベル差。
バイクで疲弊してしまったがゆえにランが走れない。
ここに大きなレースで結果が出せない大きな理由がある。
次世代選手を見ても、大室亜夢選手、大島拓人選手、林愛望選手のランは決して弱くない。
高校駅伝、インターハイ、都道府県駅伝でも活躍した実績がある。
彼らが近い将来、大きな結果を出すためには自転車競技のレベルアップが必要だ。

コーナーがスムースに曲がれない。
コーナーが怖い。
集団走行で他選手と接近し過ぎてストレスになる。
集団の動きを予想できず、余分な体力を使ってしまう。
集団の中でどこを走ったら良いか分からない。
バイク終了間近、T2に先頭で入ろうと走っていたのに気が付くと最後尾になっていた。
よく聞く話だ。

ロングやエイジにおける個人タイムトライアルの走り方にしても同様だ。
ポジションで悩むことは問題ないが、そのバランスの悪さから真っすぐ走れない、スムースに曲がれない、坂が上れない、下り坂が怖い、ブレーキの掛け方が雑、その他挙げればたくさん出てくる。
固定ローラーでパワーを上げても、しっかり出力できなければ意味がない。
実走にて効率よく走れるよう、もっと外でトレーニングをして欲しい。

川合コーチは元・日本自転車競技連盟(以下JCFと略)ナショナルコーチ・柿木孝之氏を種目別コーチとして招聘した。
JTUは以前から自転車ロード・コーチと良好な関係を築いている。
世界を目指すロードレースチームを引っ張る浅田顕氏(元JCFナショナルコーチ)からは、パリ・オリンピックの際に日本のトライアスロンチームはサポートを受けている。
東京・関東リージョンでは元JCFナショナルコーチの吉井功治氏、東海リージョンにおいては実業団チームの雄・愛三工業、近畿リージョンにおいては北桑田高校自転車部など専門指導を受けることが常態化してきた。
ランニングにおいても部分的ではあるがTWO LAPSやトップランナーの指導を受けてもいる。

バイクで実力が及ばない理由は、バイクの知識、経験、技術がないところから発生する。
これを理解して具体的に指導できるコーチが少ないことも現実だ。
そもそも日本国内に思い切りバイクをトレーニングできる場所が非常に少ない。
選手や指導者にいくら気持ちや気迫があってもトレーニング場所がないことは致命傷となる。
そのことを理解した上で、どうするのか。
専門種目コーチとの連携から、こういった事象を解決するヒントをもらうことも可能だ。
夢の実現に向けて、できることはすべて実行する。
ここからの飛躍を期待しよう!

 

【写真1】
ロードバイク集団走行安全講習会にて。
左は浅田顕RTA代表、右は柿木孝之コーチ。
2025年1月にも開催される。
是非、参加して集団走行のレベルを上げてほしい。
今回は日本体育大学トライアスロン部からも13名が参加した。

講習会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【写真2】
村上晃史コーチのランニング指導。
ニナー賢治選手を育てた手腕は極めて優秀だ。
トライアスロンのコーチだからといって専門種目の指導者よりも劣っている訳ではない。
視野が広い分、優秀な部分も数多くある。
専門種目指導者とどのように連携してゆくか。
双方が高め合えるようなパートナーと連携することが重要だ。

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中山俊行プロフィール


中山 俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督

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