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第211回コラム「それぞれの選択、それぞれの道」

2024年、お台場・日本選手権。
天候に恵まれ11月とは思えない暖かさの中で開催された。
出場選手には、それぞれ目標があり、目的があってこの大会に挑んでいるはず。
注目する選手が目指す道、目標をじっくり観戦した。
レース結果はすでに周知の通り。
大方の下馬評の通りの結果となった。

女子では圧倒的強さを示し高橋侑子選手が優勝。
現時点においては世界で戦えている唯一の女子選手と言えるだろう。
2位には若手選手、急上昇中の林愛望選手。
残念なことにバイクで落車、先頭グループから脱落する。
しかしその後のバイクでも粘り、ランで渾身の巻き返し。
次世代選手ナンバー1の実力を魅せつけてくれた。
3位はここ数年、体調不良に悩まされながらも挑戦し続けた佐藤優香選手が気力・気迫あふれる戦いで表彰台に。

男子ではパリ日本代表の座を逃し、実力が認められながらも結果を出せず苦しんでいた北条巧選手が会心の優勝。
準優勝は、底力がありながらも結果につなげられなかった内田弦太選手。
そして粘り強さ、我慢強さではピカ一の佐藤錬選手が表彰台に滑り込んだ。

結果にはつながらなかったものの今後の活躍が期待できる戦いをした選手、残念ながら実力以下の戦いしかできなかった選手、不振にあえぐ選手など結果はさまざま。
連戦に続く連戦で疲労感が濃い選手、体調不良の選手、精魂尽き果てている選手。
だが内情を知らない観客にとっては結果が全て。
非情ではあるが、それが現実。

そして、4年後への強化を考えた場合、このレース結果と内容は重要な意味を持つ。
単純に結果だけでは評価できない。
2024年に強い選手が、2028年に活躍できるとは限らない。
また日本選手権で勝つ選手ではなく、WTCSで勝てる選手を見いだし育ててゆかなければならない。
誰が可能性を示したのか。
誰がこれから強くなれるのか。
身体面だけでなく精神面も観る必要がある。

そして今年「オリンピック」という大きなイベントを終えてた選手たち、若手として台頭してきた選手たちもそれぞれの道を考える。
引退する選手、継続する選手。
世界を目指す選手、国内を目指す選手。
社会人として競技に挑む選手。
地域の発展・普及のために戦う選手。
若手選手の見本となるべく活動を継続する選手。

選手自身が選んだ道は全てが正解だろう。
だが選んだ以上、その道をしっかりと進んで欲しい。
自分の意志で挑戦し、自分の意志で戦ってきたことを誇りに思い、自信としてほしい。
社会に出て「トライアスリートって大丈夫なのか?」と言われることがないように。
競技力と併せて向上させてきた人間力を発揮してくれることを願う。

 

【写真1】
日本選手権の表彰とともに年間ランキングの表彰も行われた。
選手同士がお互いに讃え合い笑顔になれるのはトライアスロンの誇れる文化だ。
日本選手権表彰式

 

 

 

 

 

 

 

 

【写真2】
バイク技術レベルの低さは日本選手権出場選手であっても変わらない。
トレーニングを行える環境が少ないことが大きな原因ではあるが、選手自身もバイク練習に課題感をもって欲しい。
ローラー台トレーニングばかりではコーナーリング技術は上達しない。
(*写真は本内容とは関係ありません)
日本選手権_バイク

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中山俊行プロフィール


中山 俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督

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