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第210回コラム「経験を積む、とは」

UCI自転車トラック競技世界選手権。

トライアスロンのWTCSグランドファイナルとほぼ同時期に開催された。

自転車トラック競技とは1周250mの自転車競技場を利用して行われる。

パリ・オリンピックではメダル獲得種目として期待された自転車競技トラック種目であるがフランス独特の事情などにより目標達成には至らなかった。

だが今回、過去に例を見ないほど選手たちは大活躍をした。

特に女子短距離種目においての躍進は素晴らしかった。

メダルを獲得した選手たちには賛辞を贈りたい。

 

さて我らがトライアスロン競技においてはエリート、U23、ジュニア、U23&ジュニア・ミックスリレーに目を向けてみよう。

結果だけ伝えれば惨敗といえよう。

だが重要なことはその内容や戦い方。

今日の敗北が明日の勝利につながってゆくのであれば、その敗北は意味のあるものとなる。

特に今回の次世代選手には初出場の選手も存在した。

「経験」を積むために思い切って挑戦してくれたのであれば、それはきっと明日につながるだろう。

 

JTUにはレース後、選手から報告書が提出される。

そこには選手に悔しさや次回への強い意欲も書き込まれている。

「この次こそは」と感じて、行動に移してくれれば一定の評価はできると考える。

だが、ときには疑問符も付きまとう内容もある。

「思ったより世界のレベルが速くてついてゆけなかった」といった類のコメントだ。

 

大会に臨むにあたり「世界」のレベルがどれだけ低いと思っていたのだろうか。

データが大好きな選手が多くなっている昨今、他選手のレベルを何ら研究することなく出場しているとは思えない。

当然、対策は練っているだろう。

だが残念ながらそのイメージが低いことを露呈してしまう。

スイムはこれぐらいのレベル、ランはこのレベルと知っているのではいないのか。

バイクのスピードもリージョン合宿に参加していれば、ある程度は想像できるはずだ。

それを本番のレースに出場して「想像を超えて速かった」ではあまりにも情けない。

前回と変わらない戦いをしている選手や、何も進歩がみられていない選手も同様だ。

ただ「出場資格を持っているから」という理由で派遣をすることに意味があるのだろう。

 

次世代選手にとっては最初の「国際試合」がアジアであることが多い。

残念ながらアジアのレベルは世界五大陸の中でも最も低いといえよう。

アジアの中ではかつて日本は最強だった。

そのため「アジア」での結果がそのまま「世界」で通用すると勘違いしてしまう。

「アジア」と「世界」では全くレベルが異なることを理解しておかなければならない。

Triatlhоn Live でもYoutubeでもレースは見ることができるはずだ。

世界に挑むのであれば、そのスピードをしっかり確認した上でトレーニングを行う必要がある。

参加するだけでは何年経とうが互角に戦える日はこない。

 

【写真1】

フィニッシュして倒れ込む。

半分以上のケースにおいて芝居であり、頑張ったアピールでしかないと考えている。

だが本当に死力を尽くして戦い、フィニッシュした後で倒れ込む場合もある。

アジアユース選手権、内田煌乃亮VS中国選手。

敗れはしたが間違いなく全てを出し尽くした戦いだった。

優勝した中国選手は肉離れでレース後、立つことができなかった。

アジアユース_フィニッシュ

 

 

 

 

 

 

 

 

【写真2】

ジュニア世代のときほど海外選手とコミュニケーションをとって欲しい。

彼らはライバルであると共に一緒に戦う仲間でもある。

将来、転戦してゆくとき見ず知らずの土地で助け合えるのは、その仲間たちだ。

アジアユース_アイスバス
 

 

 

 

 

 

 

中山俊行プロフィール


中山 俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督

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