先日、JOCナショナルコーチアカデミーの同期と会った。
話題に上るのはパリでの評価と反省、ロスに向けての展望、トレーニング方法や取り組み方法、ライバルの状況、自身の関わるチームの動向などなど。
競技種目は違えどコーチとしての戦う心はみな同じ。
「強くなりたい」「強くしたい」「世界で結果を出したい」「証明したい」。
永遠の仲間でありライバルである。
パリ・オリンピックにおいては近代五種競技がメダルを獲得した。
素晴らしい結果だ。
射撃や馬術など一般の人たちにはハードルが高い種目を含む複合競技でのメダル獲得は、同じ複合競技でもあるトライアスロンにも通じるものがある。
その結果。
メダル獲得経験がない種目は4競技となった。
「ローイング」「ハンドボール」「7人制ラグビー」そして「トライアスロン」だ。
さて我々は何をどうして進んでゆくべきか。
「メダルを無理して獲得する必要はない」という意見もあるだろう。
競技が世間に認知され、多くの人たちが楽しく取り組めてゆければいいじゃないか、という意見があることも知っている。
これらも正論のひとつだろう。
だが競技に関わる選手のシンプルな発想として「強くなりたい」「速くなりたい」「勝ちたい」という欲求がある。
トライアスロンを含むスポーツに限らず、勉強の世界や学問の世界にも同じ欲求はある。
そういう選手の素直な気持ちを支え、夢を実現するためのサポートをしたいと私自身は考えている。
戦うのは選手。
だが、その選手を支えてゆくためには多くの人たちや競技団体などの理解や協力が必要となる。
「オリンピックで勝つこと」は、その選手の人生の中での一コマでしかない。
だがそれは大きな意味と意義をもつ一コマだ。
そこで得た自信や誇りをもって社会人として一般社会に貢献したり、指導者として後進の支援をしてゆくことが更に大きな目的ではなかろうか。
だから我々はキッズやジュニア選手の指導過程・強化過程において「感謝の気持ちと謙虚な心」「スポーツマンシップ」を伝えてゆく。
正々堂々と戦うことの意味、他選手に敬意をもつことの意味、ライバルが仲間であることの意味。
競技技術・戦術だけではなく人生に関わる多くのことを学ぶことが重要だ。
「なんのためにトライアスロンをするのか」
それぞれがそれぞれの答えを見出してほしい。
【写真1】
栃木県真岡市で開催されたオールキッズ大会。
開会式においては「楽しむこと」「フェアプレイで戦うこと」の2つを選手、保護者、所属チームの指導者・関係者にお願いをした。
多くの選手たちはこれを理解してくれたが、全選手・全関係者に理解されるにはまだ時間を要する結果となった。
【写真2】
神奈川県連合が主催したキッズキャンプ。
小中学生がトライアスロンに触れる機会を増やすことが重要だ。
だが「自転車の価格」という脅威が今後の大きな障害となってくる。
中山俊行プロフィール
中山 俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。
【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督