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第206回コラム「バイク技術を習得しよう」

自転車本体の性能が格段に上がっている。
カーボンフレームが一般化し、速く走るための性能が向上。
もちろんトレーニング理論が進み、トレーニング方法が研究されていることも挙げられるが自転車本体、そして付属する部品の性能が上がったことの影響でバイクレベルも大きな進化をみせている。

自転車競技におけるレースでのタイムも格段に上がってきている。
かつての男子と同じタイムで走る女子選手。
かつての世界記録と同等レベルで走る学生選手。
自転車競技場を使った「バンク競技」においては、競技場が1周長250mの板張りが中心となったため、そのバンク特性の恩恵もあり昭和時代、平成初期とは全く次元の異なるスピードで走ることが可能となり、それに伴う走り方も必要となってきた。
一般公道を走るロード種目においても、パワーメーターなどのトレーニング機材を有効に活用することで直線を走る速さと強さは格段に向上している。

さて日本のトライアスリートのバイク種目。
バイク技術のレベルは総じて非常に低い。
一般道路でのトレーニングが行いづらく、都会においては自転車という乗り物が歓迎されていない現実がこの問題を大きくする。
バイク技術の重要性については以前から繰り返し伝えてきているが、技術が向上しない大きな原因のひとつが「バイク種目はスイムとランのつなぎ種目」という認識が強いことも挙げられる。
JTU認定記録会もスイムとランしか実施されないために拍車がかかる。
バイクをどう評価してゆくかは今後の大きな課題。

WTCS(世界シリーズ)やWTC(ワールドカップ)などを観ていてもバイク競技でイニシアチィブを取れる日本選手は限りなく少ない。
どちらかといえばバイクにおいて、コーナーで引き離される、ターンのたびに後方で必死になって集団を追う、という場面を観ることの方が多い。
日本選手しかいない日本選手権においても同じ風景を観させられる。
コンチネンタルレースも同じ。
地域ブロック選手権も同じ。
不思議なぐらいバイク技術練習をしていない選手が多い。
力はあってもトータルで速くことができず、そしてよく転ぶ。

トレーニングの仕方が分からないのか。
指導してくれる人が身近にいないのか。
学ぶ気がないのか。
少なくともユースキャンプ(15歳以下)、リージョン合宿(23歳以下)では最低限の指導を行い、バイク技術の重要性を伝えている。
特に次世代が中心となる次世代ナショナル合宿、リージョン合宿においては自転車専門選手とトレーニングの機会を増やし多くの学びの場を作っている。
その上に位置するエリート選手であれば「走れて当然」と考える。
だが現実に目を向けると「できていない」。

先日、久しぶりにマウンテンバイクのコースを走った。
下り坂での重心移動、ブレーキング、下りから登りへの切り替え、急坂で車輪を滑らさない前後バランス、素早いギアの選択と変速、脱力をしながらのハンドルコントロール、コーナーリング。
自転車競技に必要な技術が簡単に学べる。
転倒し、滑り、寝っ転がる羽目になったが擦り傷以外の怪我はなかった。
そして繰り返し実施していかなければ技術は衰えてゆくことを実感させられた。
安全に基本的な技術練習ができる環境を探してほしい。
そしてレベルの高いレースに挑むのであれば、しっかりバイク技術を身に着けてから挑戦してほしい。
落車して怪我した選手の姿を見るのは本当に辛いのだ。

バイク(自転車)は自分の命を載せて走る乗り物。
この意味をしっかりと思い出してほしい。

 

【写真1】
自身のバイク技術の衰えを感じさせられたMTB(マウンテンバイク)トレーニング。
だが、やればやるほど感覚が研ぎ澄まされる。
ベルマーレ湘南が運営するMTBコースでのトレーニングでは、残念なことに技術を思い出す前に体力が尽きてしまった。

ベルマーレアドベンチャーヒルズ

 

 

 

 

【写真2】
神奈川県スポーツ協会が主催する競技体験会。
川崎競輪場を借りて神奈川県自転車競技連盟が実施。
神奈川県トライアスロン連合もその場を借りてトライアスロンを紹介させてもらった。
若い年齢のうちに競技用自転車に触れることも重要だ。

kawasaki_JSC

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中山俊行プロフィール


中山 俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督

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