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第204回コラム「パリに挑む!」

パリ・オリンピックの日本代表選手が決定した。
高橋侑子、ニナー賢治、小田倉真。
残念ながらミックスリレーには出場できないことも決定した。
3選手全員が東京2020オリンピック代表選手であり、二度目のオリンピック挑戦となる。
2021年の大会を経てからの3年間。
新たな強化体制の中から、新たな選手が出てくることはなかった。

東京大会において、男子のバイクレベルの飛躍的な向上、バイク後のランのレベルアップは目を見張るものがあった。
女子においても一部の選手のバイクレベルが上がると共に、ランのレベルも飛躍的に向上した。
前提として、スイムは泳げて当然。
男子においてはスイムにおけるレベル差が縮小したことから大きな集団になる傾向がみられるようになった。スイムで十数秒の差があっても選手が数珠なりに連なっているためにカバーができるケースが増えたことが理由だ。
だがスイムの遅れが致命傷になりうる状況に変わりはない。
女子においてはスイムで小集団が形成されるとそのままバイクも逃げ切る傾向が強い。
スイムが速い=バイクも速い、という選手が増えた。
女子においてはスイムでの僅かなタイム差が全てを決してしまうケースが増えている。
オリンピックという特殊な環境下におけるレースにおいては「スイムで出遅れた選手が大逆転」というシナリオが、ほぼ不可能であることは2016年リオデジャネイロから基本的には変わっていない。

さて今年はどうなるか。
東京を経てスイム、バイク、ランのレベルは当然上がっている。
そのレベルアップの様は想定を上回る勢いだ。
女子においてはアメリカの強豪、T.ニブが自転車競技タイムトライアル種目でアメリカ代表の座を勝ち取るような状況。
そしてランにおいてもトップ選手たちのタイムは、男女とも陸上競技の日本選手権5000m、10000mの参加標準記録を突破している。
すなわち日本における陸上競技のトップ選手たちと対等の走力をもっているのだ。

日本の次世代選手の中にも高校駅伝、都道府県駅伝に出場経験を持つ選手。
競泳においてインターハイ、インカレ、日本選手権に出場経験を持つ選手。
専門種目で結果を出した選手も出現してきている。
3種目での強さは当然だが、個々の種目においても専門選手と戦える実力が必要な時代になってきている。
ニナー賢治選手も山梨学院大学陸上競技部、九電工陸上競技部と共に練習する機会を作っている。
JTUとしても陸上競技の記録会に積極的に参加することを推奨している。

レベルアップをし続ける世界のトライアスロン界。
日本選手がどこまで世界に対抗できるのか。
もはや選手個人が自力のみで戦えるレベルではない。
取り残されないための準備が必要だ。

田山寛豪・流経大監督が2012年のロンドン大会前にマドリードで8位入賞を遂げた。
そのとき以来の結果を横浜の地でニナー賢治選手が出した。
本番でこの実力を発揮できるか。
更なるレベルアップをもとめて代表3選手たちの戦いは続いている。

 

【写真1】
WTCS横浜決戦。
ニナー賢治選手がオリンピック選考の基準をクリア。
1枠目を獲得した。
男子2枠目は小田倉真が獲得。
Yokohama_Kenji

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【写真2】
東京2020オリンピックを一緒に戦った岸本新菜選手が競技生活に区切りをつける。
怪我・故障と闘いながらここまで踏ん張ってくれた。
一緒に東京2020を戦った戦友に感謝。
Yokohama_Niina

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中山俊行プロフィール


中山 俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督

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