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第199回コラム「バイク力の低下を憂う」

WTCSグランドファイナル・ポンテベドラ大会、日本選手権in東京港。
そしてWTC宮崎。
海外、国内の最大レース、主要レースが終了した。

レースをみて感じたこと。
日本選手と海外トップ選手との実力差。
特にバイクにおいては、ごくわずか、一部の選手を除いて戦えるレベルにない。
WTCレベルで集団に付いてゆくのが精一杯。
世界レベルの向上が著しいWTCSにおいては、高橋侑子選手やニナー賢治選手など少数の選手を除き、戦いに参加できていない状況になってしまった。
スイムは一定の勝負ができているだけに残念な現実だ。

確かに日本国内はバイク・トレーニングには適しているとは言えない。
大きなハンディを背負っていることは事実。
だが世界レベルを目指している選手であれば、その差を埋めるべく様々な工夫をしているはず。
「しているはず」なのだが。

機材の進歩で自身のペダリング技術が確認できるようになった。
出力を瞬時に測定できるようになった。
いつでも簡単にトレーニングを開始できる。
短い時間でも効果的なトレーニングが行える。
室内トレーニングが好きなことが悪いとは言わない。
これはこれで非常に重要なことだ。

一方、実走でレベルアップを図ろうとしている選手はどれぐらい存在するだろうか。
海外レース、特にヨーロッパのレースを考えてみよう。
狭いコースを大集団で走る。
石畳など悪い路面を走る。
急なコーナー、慣れないコースをハイスピードで走り抜ける。
暗黙のマナーやルールが集団には存在する。
これら全て室内トレーニングでは身につけられない技術であり走り方。
どうやったら身につくのか。
そう。実際に走るしかない。

細かい技術練習をする選手、自転車専門選手と一緒にトレーニングをする選手、様々な自転車レースに出場する選手、可能な限り外でのトレーニングを行おうとする選手。
データや数字を追いながらも、現実を理解している選手だけが辛うじて世界のバイクレベルに追随している。
それでも現実的にはその差が縮まっているとは言えない現実。

日本選手のスイムは全般的に良好。
これは2008年北京オリンピック以降に強化方針として繰り返し伝えてきたスイム重視の成果と考える。
またランもJTU認定記録会を継続的に実施してきた結果、それなりにタイムを出している。
目標達成には遠いが決して遅くはない。
バイクは。
10年前ならばバイクの弱さを誤魔化して戦うことも可能だった。
だが今となってはもう無理だ。
スイム、ラン同様にバイクのレベルをどう引き上げてゆくか。
来年開催されるパリ五輪はバイクでの勝負が結果に大きな影響をもたらすだろう。

2028年を目指す選手であればバイクの重要性をしっかりと認識した上で、どの時点で、どのような形で強化を図るのか明確に考えて欲しい。
もちろんスイムを前方グループでフィニッシュすることは大前提。
その上で、単純なランのタイムではなく、激しいバイクでの戦いを終えたのちのランタイムが勝負を決することを理解しておいて欲しい。
開いてしまった差をどう取り返すか。
答えは判っているはずだ。
 

【写真1】
雨の中、開催された日本選手権。
当然、コーナーは滑りやすく体力的にも精神的にも厳しくなる。
男子レースの第1グループは3名であったが、追走する大きな集団は追いつくことができなかった。
確かな技術を身につけることが必要だ。
23日本選手権_男子B
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【写真2】
WTC宮崎大会でのラン。
バイクではスピードの激しい変化がある。
一定ペースで走る場合と比べてダメージは格段に大きい。
その後のランでしっかり走れることが「勝負に参加する」ための条件。
ラン単体のタイムを上げることを目指すと共に、バイク後のランを走るためのフィジカル&メンタルの強さを引き上げることが必要だ。
宮崎_ケンジ

 

 

 

 

 

 

 

 

中山俊行プロフィール


中山 俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督

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