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第193回コラム「目指せ!!バイクレベルの向上」

2023年のシーズンと共に春休みを利用して各リージョンでは合宿を開催し、JTUタレント選手の強化を進めた。
JTU 認定記録会がスイムとランだけで開催されていることから、どうしてもバイク強化の順番は後回しになってしまう。
止むを得ない事象ではある。
問題は「どこの時点、どこの世代で本格的にバイクレベルを向上させるか」だ。

東京・関東イースト・関東ウエスト・リージョンは日本自転車競技連盟の公認指導者で我が母校・明治大学自転車部のアドバイザーも務める吉井功治コーチを積極活用してレベルアップを図っている。
東海・北陸リージョンは自転車競技の名門・愛三工業の選手・指導者の協力を得ながら合宿を継続的に開催している。
もちろん他のリージョンもトライアスロン経験豊富なアスリートの協力を得るなど様々な工夫をしながら開催している。

世界のレベルが格段に上がっている。
WTCSにおいてはトップトライアスリートの実力は競泳選手と遜色ない。
ランニングも陸上長距離選手として通用するほどの高いレベルになっている。
そしてバイク。
ヨーロッパの選手は、ツール・ド・フランスに出場するレベルの選手と一緒にトレーニングを行っているケースもある。

パワーメーターでのトレーニングで数値的なデータを上げてゆくことができる。
長時間の実走トレーニングで基礎機能を上げてゆくこともできる。
スラロームや8の字走行を練習し、基礎技術を上げることもできる。

しかし実戦の中でしか学べないこと、経験できないことがある。
前後左右を選手に囲まれた状況の中で時速40kmを越える速度でコーナーを曲がる。
他選手と身体を接触させながらバイクで走る続ける。
風の吹く方向によって即時に隊列を変え、効率良い集団走行を行う。
誰かがスパートを掛け、即時に反応できる感覚と技術。
集団走行をする際の暗黙のルール。

残念ながら日本においては世間一般の方々のバイク(自転車)に対する理解度は浅く、トレーニングを行いやすい環境とはいえない。
環境が悪い、といえばそれまでだ。
だが環境を嘆いても、レースの結果が好転する訳ではない。
限られた状況の中でも最善を尽くすしかない。
残念ながら日本選手の自転車に対する知識や認識は非常に乏しい。
トライアスロン指導者についても同様のことが言える。

なぜ、そのバイクを選んだのか。
なぜ、そのホイールを使うのか。
なぜ、そのポジションに設定しているのか。
なぜタイヤ空気圧をその数値にするのか。

バイク競技は機材を使う。
そのため考えることが多く、嫌になる気持ちも理解できる。
だが逆の見方をすれば、その理由を知ることでバイクレベルの向上にもつなげられる。
嫌なことから逃げない。
苦手なことを避けない。
バイクについてはまだまだチャンスも多い。
ぜひとも積極的に学び取り組んでほしい。

【写真1】
東京・関東イースト・関東ウエストのリージョン合宿においてはJCFコーチでもある吉井功治氏と現役選手を繰り返し招聘してバイクスキルのレベルアップを徹底的に図っている。
複数回合宿に参加している選手、初めて参加する選手の技術の差は広がっている。
23.3リージョン合宿
 

 

 

 

 

 

 

【写真2】
川崎市トライアスロン協会主催で開催された自転車スクール。
講師は田中文也選手。
広いスペースを利用して安全に自転車の乗り方を学ぶ。
小学生世代から正しい自転車の乗り方をマスターしてほしい。
川崎バイク講習会
 

 

 

 

 

 

 

中山俊行プロフィール


中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督

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