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第191回コラム「選手育成のために」

強い選手を輩出するためには何が重要か。
有望なタレント選手が死に物狂いでトレーニングに取り組むことは基本だ。
だがどんなに優れた選手にだって良いときもあれば悪いときもある。
常にベストな状態で、常に最善のトレーニングができる訳ではない。

毎日100%の全力トレーニングは理想であるが現実的ではない。
だが毎日100点のトレーニングを行えるようにする方法はある。
そのために必要なのは選手を支える強力な支援者だ。
特に育成経験と知識豊かな指導者の存在は選手のレベルアップを左右する。
既に世界を舞台として戦ってきた指導者は複数名存在する。
その中で結果を残してきた指導者の経験と知識こそがトライアスロン強化の宝だ。

「自分は自分のやりたいようにトレーニングに取り組む」
今も昔もこのような声を聞くが、一定レベルまでは戦えてもホンモノ(世界)とは戦えないことは実証済み。
戦う自分を支えてくれる指導者、導いてくれる指導者は必要不可欠。
そしてサポートしてくれる人たち、応援してくれる人たち。
多くのものを背負うことになるが、だからこそ強くなれる。
本気で世界と戦うことを望むのであれば、指導者は必要不可欠であることをしっかり認識しなければならない。

そしてこれは指導者にとっても重大なプレッシャーだ。
人生を賭け、命を賭けて挑戦する選手。
それを支えることは並大抵ではない。
日々の指導はもちろん、変わりゆくルール、機材、スポーツ理論、世界状況、支援体制、サポーターとの情報交換、その他諸々。
数えてゆけば果てしない作業となる。
選手を指導・育成してゆくためには指導者自身も常に学び続けなければならない。
日本の中に、このような覚悟を持った指導者がどれだけ生まれてくるか。
それによって「メダル獲得」という言葉が「現実」となるか「夢」で終わるのか、将来が見えてくる。

そう。
選手を支える体制も重要であるが、同じく優秀な指導者を支える体制も必要なのだ。
指導者にも生活があり、家族があり、仕事がある。
選手であっても競技だけで生活をすることが困難であるように、トライアスロンの指導だけで生活をすることも簡単ではない。
だが、それでも挑み続ける指導者は存在する。
プロ選手、エリート選手を支える指導者。
指導者本人からその大変さが語られることはまずない。
だが、その本当の凄さは是非知っておいて欲しい。

【写真1】
年末に開催されたJTUナショナルチーム次世代合宿。
若い世代の頃から優秀な指導者に接することは重要だ。
この合宿に選手を送り込んでいる=その指導者も優秀である。
様々なタイプの指導者から学ぶことは選手にとっては貴重な体験となる。
ナショナル次世代22_12

 

 

 

 

 

 

 

【写真2】
定期的に開催されるリージョナル合宿。
この合宿に参加するにも一定レベルの結果が必要。
そのレベルまで自身を磨いてきた選手の努力を認めて欲しい。
自分の地元にどんな若手有望選手がいるのか。
そんな戦う地元の若手選手をぜひ応援してあげて欲しい。
その応援が日本チームの悲願につながるかも知れない。
リージョン合宿_221227

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中山俊行プロフィール


中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督

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