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第190回コラム「超えろ、エリートへの壁。U23選手との間にあるもの」

ワールドトライアスロンカップ宮崎大会。
日本トライアスロン選手権に続く国内ビッグレースだ。
今年はトップエリート選手の出場が少なかったため日本のU23選手たちにもチャンスが回ってきた。
シーズンを通しての疲れもあり、また国際大会に慣れていないU23選手にとっては緊張の大きな大会になることは予想できた。
回ってきたチャンスを活かすか否か。
結果が最重要ではあるが、レース内容が来年への大きな糧となることは間違いない。

女子出場人数47人。男子出場人数60人。
バイクコースが簡略化されたこともあり大集団になることも予想された。
大会当日の海はかなりの荒れ模様。
スイムで大きくバラける可能性が高く、スイムを得意とする選手には有利に働くと感じた。
U23選手は男女ともスイムを得意とする選手が多い。
しかし。

女子は。
スイムからバイクに移り第1グループ18人に残った日本選手はエリートの2名のみ。
荒れたな海でのレース経験の少なさが出てしまった。
U23選手は1人も加わることができなかった。
バイクでは、日本選手は第2グループをキープすることはできたがバイクが終了する頃には第1グループとは1分以上の差がついてしまった。
ランで猛烈に追い上げるなどの大きな見せ場もなく終了してしまった感は否めない。

男子は。
こちらも第1グループ11人に入った日本選手はエリートの3選手のみ。
U23選手たちは第2グループとなってしまう。
バイク終了時には50秒以上の差が開き、女子レース同様、U23男子選手の見せ場はなかった。
エリート男子は表彰台が期待されたが、あと一歩。
だが5位、6位、7位と入賞ラインに3人が入ったことは大きな収穫だ。

練習でのタイム差はエリート、U23、それほど大きくない。
だがタイム差と実力差には大きな隔たりがあることは否めない。
これはレース経験の差に負うところが理由の一つ。
更にはレース出場に向けて背負うものの大きさの違いが一つだろう。
エリートは「これで飯を食っている」というプライドがある。
また現時点においてはパリ・オリンピックに関わっているという意識の差。

目に見えないが、こういった要素が勝敗に大きな影響を与えている。
スタート前の選手の顔つき、準備がそれを証明している。
U23選手がダメだったと言っているのではない。
だがエリートと互角に戦うためには、まだ超えなければならない壁がいくつもある。
それを認め、向かい合い、そして乗り越えていって欲しいのだ。

WTCSFアブダビ、そしてU23世界選手権。
出場選手には掲げた目標を達成すべく、誇り高き戦いを期待する。
2022年レースでの借りはレースで返すしかない。

【写真1】
荒れた海へと飛び出す選手たち。
久しぶりにスイムの経験と実力が試されるスイム環境となった。
安全性が最重要。
だが安全性を重視し過ぎると困難な状況に立ち向かう強い心が育ち辛い。
この両者を両立させるコース作りも選手強化には必要不可欠だ。
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【写真2】
宮崎大会と同日に開催されたキッズ&ジュニア大会。
結果ではなく「勝負すること」「全力で遊ぶこと」が大切だ。
今後、ジュニア選手、キッズ選手への普及・拡大は最も大きなテーマの一つとなるだろう。
選手を支えるコーチ、レースを支えるTOの双方の進化が求められる。
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中山俊行プロフィール


中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督

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