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第189回コラム「第12回日本U23選手権を振り返る」

日本国内の最高峰レースの一つ、日本トライアスロン選手権。
今年は東京お台場の地に戻ってくることができた。
とても喜ばしいことだ。
日本の中心地・東京。
その中でも有数の観光スポットである台場でレースが開催されることの意味と意義は大きい。

しかしながら第28回日本トライアスロン選手権の様相は少し異なった。
既に2024パリ・オリンピックに向けた戦いがスタートしていることは周知の通りだ。
そのためにオリンピックを目指す選手にとって最も重要なことはワールドランキング、そしてオリンピックランキングを上げることだ。
すなわちポイント獲得を最優先事項として考えることになる。
ほぼ同じ日程でWT世界シリーズ・カリアリ大会が開催され、翌週にはワールドカップ・トンヨン大会が開催される。
そのためにオリンピックを目指しているエリート・トップ選手の参加は少なくなってしまった。

だがエリートメンバーが絞られたことにより、併催となっている第12回日本U23選手権が一気に面白くなった。
次世代を担う選手は誰なのか。
2028年に向けて世界の舞台に上がってゆく可能性を秘めた選手は誰なのか。
2022年アジアU23/ジュニア選手権で活躍した選手たちが日本のエリートにどこまで喰らいつくのか。
女子では林愛望、中嶋千紗都、池口いずみ、平泉真心が、男子では安藤勘太、望月満帆、徳山哲平、そして復活を賭けた吉川恭太郎の戦いが期待された。

やはりレースは面白い。
女子では復活途上のオリンピアン・佐藤優香、国体王者の江田佳子、ワールドランキング上位の福岡啓が積極的にレースを進める中で、U19選手権日本王者の林愛望がインターハイランナーの実力を見せ勝利をもぎ取った。

男子はレースになると人格が変わるほどの強さを見せる小田倉真が圧勝。
そこに玉崎陵也、吉川恭太郎が喰らいつく。
結果は伴わなかったが徳山哲平の積極性も見過ごせない。彼はバイクでは序盤から仕掛け逃げ集団を作ろうとする。ランではスタートから小田倉を引き離そうと試みる。
このような挑戦的な戦い方をする選手にこそ世界への扉が開いてゆくだろう。
不調ながらも国体、日本選手権とバイクで逃げまくるレース展開を見せた谷口白羽にも復活を期待したい。

東京オリンピックを契機に日本男子選手のレベルは底上げされた。
2016年リオデジャネイロで田山寛豪が孤軍奮闘していた時代から大きく様相が変わってきた。
素直に喜ぶと共に更なる高みへと進んでくれることを期待する。

*選手敬称略

【写真1】
報道バイクに導かれながら先頭を走る林愛望選手。
高校生アスリートの鮮烈な日本選手権デビュー。
日本U19選手権に続き2つ目のタイトルを獲得した。
221009林愛望リード

 

 

 

 

 

【写真2】
大会会場には日本郵政グループ女子陸上部の高橋昌彦監督も視察に来てくれた。
彼はかつてトップ・トライアスリートの一人であり、デュアスロンの日本王者であった。
トライアスロンを熟知している日本トップの陸上指導者なのだ。
221009高橋昌彦

 

 

 

 

 

中山俊行プロフィール


中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督

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