2022年5月28日、イタリアのアルツァケーナでワールドカップ(以下WTC)が開催された。
このレースを皮切りにトライアスロン界は、2024年パリ・オリンピックに向けた本格的な戦いがスタートした。
オリンピック出場に直接的に係るポイント獲得のための戦いが始まったのだ。
ポイント対象大会出場に向けたシステムは複雑なようで簡単だ。
対象大会に参加できるのはワールド・ランキング(以下WTR)上位の選手。
WTR上位に位置することが戦線のスタートに遅れないための条件となる。
注意点①:誰でも簡単にポイント対象大会に出場できる訳ではない。
WTRが高くないと出場したいレースに自由に出場できない。
オリンピック出場は、オリンピック・クオリフィケーション・ランキング(以下OQR)を基本に出場可否と国別出場枠(出場できる人数)が決められる。
OQRポイント対象となるのは世界シリーズ(以下WTCS)とワールドカップ(以下WTC)、大陸別選手権など。
2022年、日本での主な大会は5月のWTCS横浜と10月予定のWTC宮崎大会。
すなわち世界レベルの大会で戦うことが求められる。
注意点②:日本王者がオリンピックに出場できるとは限らない。
WTCSとWTCを転戦することは絶対条件。
OQRが始まる前までにWTRを上げておくことが必要だ。
ではWTRはどうやって上げるのか。
新鋭の選手がいきなりWTCS、WTCに参加することは難しい。
WTRがない(低い)からだ。
最初はワンランクグレードが落ちるコンチネンタルカップ(以下CC)、U23&ジュニア世界選手権、大陸別選手権などに出場して好成績を上げ、ポイントを稼ぐしかない。
ただしポイントが加算されるのは基本毎年6レースまで。
やたらに出場しても意味がない。
注意点③:ステップアップは、コンチネンタルカップ+α → WTC → WTCS
ポイントを稼いでステップアップしてゆく。
そう!!オリンピック出場までは実に長い道のりなのだ。
オリンピック直前に「選考大会で勝てば出場できる」というシステムではない。
テニス同様、戦い続け、そして勝つことでポイントを獲得することができ、その結果、ランキングが上がってゆくのだ。
JTUハイパフォーマンスチームは警鐘を鳴らす。
2028年ロス・オリンピックを目指すのであれば今から4年後の2026年5月までにWTR60位以内に入っておく必要がある、と。
そうでないとポイント対象レースへの参戦がスタートから出遅れてしまうからだ。
注意点④:好きな大会に自由に出場するためにはWTR60位がボーダーラインとなる。
大きな夢をもってトライアスロンに取り組んでほしい。
だが「オリンピック」という言葉を口にするのであれば現実を理解し、実績を残してゆく必要がある。
夢を叶えるためには計画的に、そして尋常ではない努力が必要とされるのだ。
【写真1】
1985年10月、熊本県天草市(当時は本渡市)においてオリンピック・トライアスロンの源流となる国内大会が初めて開催された。
写真は大会を記念して建てられたモニュメント。
表彰台の役目も果たす。
新型コロナの影響で2年間中止となったが今年は無事開催された。
【写真2】
天草大会前日に開催されたキッズ・アクアスロンは生憎の天候となりスイムが中止となった。
それでも元気にキッズ・アスリートは走っていた。
勝敗にこだわるのではなく、勝負することそのものを楽しんで欲しい。
中山俊行プロフィール
中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。
【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督