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第184回コラム「世代交代のとき」

世界情勢は変わらず不安定。
世界の平和、ウクライナの平和を願う気持ちに偽りはない。
だが自身ができることは少ない。
そして、このような状況下でもスポーツの世界ではパリ2024大会に向けた戦いが進んでゆく。
スポーツが平和の貢献できるのか。
厳しい現実を理解しながら我々は今できることにひとつづつ挑んでゆくしかない。

2020東京大会で戦った4選手たちは2024年に向けても全選手が競技活動を継続している。
競争力を高めてゆくことが競技のレベルアップにも貢献してゆく。
東京オリンピック代表選手たちを乗り越え、代表の座を奪い取る新たな選手が出現するか。
東京で日の丸のために戦ってくれた選手を応援する気持ちと、新世代の登場を心待ちにする気持ち、この両方が混在している。
この両者の凌ぎ合いが厳しければ厳しいほど日本チームのレベルは上がってゆく。
選手自身にとっては嬉しくないだろうが。

世代交代は選手にだけ求められるものではない。
それを支える競技団体、強化チームにも必要だ。
新たな血が、新たな考えを生み出し、そして新たな体制のもと、新たなメンバーが活躍することが重要だ。
現在、JTUの中で若手コーチたちが積極的に活動をし始めた。
自身がオリンピックに出場した選手たちも指導者へと立場を変え強化活動をスタートしている。
もちろん名選手が名コーチになるとは限らない。
人のために尽力できない指導者が名コーチになることはない。
選手の成長、他人の成長を素直に喜べる指導者にこそ、名コーチになれる素質がある。
選手ではなく、自分自身のことが大好きな指導者は、危険な存在にしかならない。
「学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない。(ロジェ・ルメール氏)」
指導陣の世代交代にも注目していってほしい。

この先、世代交代がどれだけ進んでゆくか。
良きものを引き継ぎ、新たなものを加えてゆく。
日本トライアスロン界の未来は選手と共に若手指導者の肩に掛かっている。
 
 

パンクラス
【写真1】
久しぶりに古巣、パンクラスの試合を見てきた。
かつて王者だった選手。
そして、小学生時代にその王者から指導を受けてきた選手。
時を経て成長し、挑戦権を獲得し、挑んだ試合。
師匠は弟子の挑戦を正面から受け止めた。そして弟子が師匠を乗り越えた劇的な内容だった。
 
 

リージョナル合宿
【写真2】
リージョナル合宿で若手指導者から学ぶ選手たち。
プールを利用した実戦トレーニングを行っている。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
世界に挑戦できる期間は長くはない。
だからこそ指導者は、選手を少しでも早くレベルアップさせるため自身の歴史で学んだことを選手に伝える。
しかし選手は自分流のやり方(自身の経験)を好む。
広い知識と経験、自身のささやかな経験。
どちらが世界に早く到達できるかは明瞭だ。
 
 

中山俊行プロフィール


中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)トライアスロン日本チーム監督

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