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第171回コラム「ワールドクラス・パスウェイ・ネットワーク(WPN)事業。」

ワールドクラス・パスウェイ・ネットワーク事業。
聞きなれない言葉だと思う。
これは日本スポーツ振興センターが旗振り役となって行われている有望選手の発掘・育成事業のこと。
全国各地域で実施している「スーパーキッズ」「ゴールデンキッズ」「プラチナキッズ」等の呼び名は様々であるがジュニア選手発掘・育成事業により選び出された運動能力の高い小中学生たちを定期的に集めて基礎的な運動を指導している。
その運動能力の高い子供たちを各専門種目に転向させてゆくための事業「アスリートパスウェイの戦略的支援」に関して日本トライアスロン連合は承認を受け、委託されている。
現在は福岡県と埼玉県で実施されている。

この事業は2021年3月まで実施される。
福岡県、埼玉県のJTUコーチが中心となり、小学生選手、中学生選手の指導を定期的に行っている。
もともと運動能力の高い選手たちなのでモチベーションも高く、レベルアップも早い。
とはいえ身体はまだ発育過程のジュニア選手。
やり過ぎ、やらせ過ぎには注意が必要だ。

コロナでの自粛期間中にしっかりとした体幹トレーニング方法、ストレッチ方法、呼吸の意識など基本的な事を指導できたことは非常に有効だった。
通常であれば「練習だ」「トレーニングだ」「運動しなきゃ」と焦ってしまい基本や基礎がおざなりになる。
コロナのため外で活動できなかった期間、プールで泳げなかったことはマイナスポイントであるが、この基本・基礎を伝えられたことは非常に大きなプラスポイントだった。

実はこれは指導者の育成にも大いに関係するのだ。
ジュニア選手の育成はエリートとは別の難しさがある。
選手とその両親、場合によっては学校や地域クラブとも連携が必要になってくる。
小中学生である以上、学校の部活動や地域クラブ活動との調整は簡単ではないが担当地域の指導者は焦らず育成していってほしい。

今の時代はSNSへの指導やハラスメント対策など指導者が学び、そして配慮すべき事項はとても多い。
ハラスメント問題が簡単に取りざたされる昨今、指導者になることはリスクも伴う。
日本トライアスロン界の大きな課題は選手同様、優秀な指導者の発掘・育成でもある。
選手を守るシステム、指導者を守るシステム、この両方を作り上げてゆくことが優秀な指導者の発掘・育成にもつながると考える。

自身の人生を選手指導に賭けるコーチが少ないことは現実だ。
しかし各地域には優秀な指導者が結構、隠れている。埋もれている。
こういった有能な指導者の卵が大きな目標を抱き、大舞台で活躍してくれることを願っている。

求めるのは「メダルを狙う」選手と指導者だ。

france2
【写真1】
フランスでコーチ修行中の福井英郎氏。
2024年パリ・オリンピックを見据えフランスで指導を学ぶ。
慣れない土地、言葉が充分に理解することが難しい環境での修業は簡単ではない。
 
 
 

MoreCADENCE
【写真2】
私の出身・明治大学自転車部のOG石井寛子が12月28日「ガールズGP」に、そしてOB守澤太志が12月30日「KEIRIN GP」に出場することになった。
オリンピックの世界とは異なるが、KEIRINの世界でどんな戦いを見せるのか楽しみだ。(*写真はMoreCADENCE HPより引用)
URL:KEIRINグランプリ2020 | トラック競技/ロードレース/競輪ニュース-More CADENCE

中山俊行プロフィール


中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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