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第169回コラム「雨の中の激闘。U23/U19/U15日本選手権」

長い新型コロナ感染防止の自粛期間を経て開催された年代別日本選手権。
感染防止対策に配慮をしながらも無事開催することができた。
開催計画段階から様々な課題があったが、その全てを乗り越えての開催だ。
受け入れてくれた海津市を含め、開催に関わった多くの関係者には敬意と感謝の気持ちでいっぱいだ。

出場する選手たちは久々のレースに強い気持ちをもって臨んでくれた。
当日は冷たい雨が降った。
長良川の水温も10月中旬という時期の影響もあり20度を超えることはなくウエットスーツ着用が許可される寒い環境。
でも選手はひたすらレースに集中していることを感じた。

レースはU23選手権からスタート。
男子も女子も優勝を狙う選手、上位を狙う選手がスイムから先行してゆく。
バイクコースは例年から少しばかり変更をしたものの安全性優先のコース設定のため大きな差が生まれ辛い。
また路面も滑りやすいことから、どうしてもスピードは緩んでしまう。
そのため集団になりやすい。
しかしランスタートの時には「勝たなければならない選手たち」が前方に位置している。
どんな条件下であっても強い選手はレースを積極的に進めてゆける。
男子は大阪大会に続きランでの実力を示した安松青葉選手が優勝。
吉川恭太郎選手がギリギリまで食らいつき成長を示した。
女子は優勝候補の中山彩理香選手がバイク序盤でクラッシュしてDNF。
酒井美有選手が3種目で安定した実力を示し、復活の優勝となった。

U19選手権も実力選手たちがスイムから先行してゆく。
男子で目立ったのは福島旺選手。スイムで飛び出し、バイクでも積極的に先頭を走る。
優勝したランニングの実力者・安藤勘太選手と共に自身の得意種目でしっかりと存在感を示した。
女子では2019年世界ジュニア選手権6位の中島千沙都選手を中心としてレースが進む。
愛知県の林愛望選手がランフィニッシュの直前まで食らいつく。
一瞬たりとも気に抜けない緊張感のある非常に良いレースだった。

U15選手権は残念ながらデュアスロン。
ウエットスーツを準備する難しさ、安全性を最重視するスタンスからの措置だ。
スイムの実力が図れないのは残念だが、私がこの世代に求めることは取り組む姿勢。
速い遅い、勝った負けた、は二の次だ。
元気に、前向きに、真剣に、一生懸命に取り組むことが上のカテゴリーに上がったときの結果につながる。
小賢しい戦略やU15選手権で勝ったという結果だけでは将来に向けての参考にはならない。
しかしU15選手全員が与えられた環境の中、全力で挑戦していたと感じた。
これはとても嬉しいことだ。
だが、ここはまだスタート地点でしかないことを覚えておいてほしい。

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【写真1】
年代別日本選手権は新型コロナ感染防止を十分に行った上で開催された。
選手は検査テントで最後の体調チェックを受けトランジションエリアに入る。
担当コーチ、両親はもちろんJTU強化関係者も立ち入ることができない。
「自分のことは自分自身で行う」という基本が求められた。
 

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【写真2】
2020年・年代別日本選手権は雨の中での開催となった。
2001年から2019年までのU15選手権トップ3の選手を集計した。
エリート強化指定選手を獲得できた選手は女子で10名強、男子で20名弱。
この結果を選手、指導者、保護者、関係者はどう考えているのだろうか。
そして、どう考えてゆくべきだろうか。

中山俊行プロフィール


中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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