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第168回コラム「ミックスリレー世界選手権イン・ハンブルグ」

世界トライアスロン選手権(ハンブルグ)の翌日9月6日に開催された世界ミックスリレー選手権。
優勝候補はフランス、イギリス、アメリカ。
フランスは男子ITU世界ランキング1位のV.ルイをエースとしてチームを組み立てる。アンカー勝負に持ち込む作戦だ。
イギリスは女子の強さがアメリカと共に突出している。
勝負をどこで仕掛けるか。
4走のブラウンリー兄弟もしくは5000m13分台ランナーのA.イーで勝負したいだろう。
アメリカの女子は世界最強。
こちらも男子がキーポイント。
リレーに特化した選手で勝負に出る。

残念ながらITUミックスリレーランキング2位のオーストラリアと4位のニュージーランドはコロナの影響から出国することができず参加しなかった。
日本も4名が揃わず欠場。

今回の目玉はノルウェー。
今までは女子2人目の選手が存在しなかったためミックスリレーには出場できなかった。2019年WTSグランドファイナル王者のC.ブルーメンフェルト、2019年70.3アイアンマン世界王者のG.アイデンを擁するこのチームがレースにどんな影響を与えるか。
非常に興味深かった。

結果から言えばフランスの作戦が成功。
V.ルイが期待通りの強さを見せ見事に優勝。
2位は女子が安定したレースでつなぎ、リレーに特化した男子選手が活躍。
リレー特化作戦が成功したアメリカ。
イギリスは4走、A.イーのランが思うように伸びず3位。
そして4位には驚きの結果となるノルウェーが入った。
ちなみにノルウェーはミックスリレーに出場したことがないのでITUミックスリレーランキング外となっている。

ノルウェーチーム、注目すべきは2走のC.ブルーメンフェルトの戦い方。
3走にニューフェイスの女子選手を配置したため、そこをどうカバーするかがキーポイントだった。
1走でイギリスに14秒差を付けられた。
優勝を狙うアメリカ、フランスはノルウェーと同じグループ。
スイムを集団で終えたC.ブルーメンフェルトはバイクに入るや序盤で逃げを見せる。
距離は僅か6.5km。
リレーのためどの国の選手もバイク巡行速度は速い。
しかし彼は迷わず飛び出す。
3走でタイムを失うことを想定した作戦であることは理解できるが、それを実行できるバイク走力には驚くばかり。
結局、バイクフィニッシュの時には後続に約15秒をつけ、ランでもそのタイムをキープ。
ノルウェーの3走は速くはないとの判断から他国が彼の逃げを容認したとも考えられる。
しかしながら6kmを独走した上で、ラン1.7kmでもタイムを詰めさせないのは驚きだ。
ノルウェー3走は、そのタイム差をフル活用してスイムをメイン集団と一緒にフィニッシュ。
バイクでやや遅れるも、ランでも粘り、入賞圏内には留まった。
そして4走G.アイデンが激走し、4位入賞を果たした。
表彰台には届かなかったがミックスリレーにおける新たな戦い方を示す結果となった
日本チームが出場していた場合、どんな結果になっていただろうか。

ミックスリレーはどの国にとっても、まだまだ未知の部分があり、さまざまな戦略を考慮する必要があ
りそうだ。

Norway男子
【写真1】
ノルウェー男子3選手。
2019年WTSの経験から各国とも対ノルウェーを想定したバイク対策は行ってきたはずだ。
それでもなお圧倒的な力を示した。
2021年に向けては、どの国も更にバイクレベルを上げてくるだろう。
 

台場2019
【写真2】
2020年の日本選手権がお台場で開催できることとなった(写真は2019年大会)。
スプリントになったとはいえ、この状況下において東京都内で開催することが、どれだけ大変なことかは誰もが想像できると思う。
無観客レース、公園内立ち入り制限、全選手および全スタッフに対する大会前のPCR検査実施など厳重なコロナ対策をすることを条件として開催できるようになった。

中山俊行プロフィール


中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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