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第150回コラム 「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)代表選手選考基準(上巻)」

2020年東京オリンピック。
2018年末、トライアスロンの代表選手選考基準が発表された。
2000年から正式競技となったトライアスロンも2020年東京で6回目を迎える。
悲願のメダル獲得に向けて選手も関係者も日々精進している。

このコラムを読む人たちにも、それぞれが応援している選手がいるだろう。
誰もが、その選手に出場してほしいと考える。
どの選手も人生を賭けて挑んでいる。
本当は頑張る選手全員に出場して戦ってほしい。

だがオリンピック出場は簡単な道ではない。
ましてや「メダル獲得」は修羅の道だ。
頑張ったから獲得できるような簡単なものではない。
日本チームの悲願を実現するためには、選手は常人を超えた努力が必要となのだ。

対人競技ではないトライアスロンにおいては自分の実力を勘違いしやすい。
1度負けたら終わってしまうトーナメント方式を想像して戦う必要がある。
代表の席を獲得するためには勝ち抜いていかなければならない。
勝者が居れば敗者も居る。
非情ではあるが我々はその中から本当に戦える選手を選ぶ必要がある。
応援することと選出することは別物と考えなければならない。

だからこそメダル獲得を実現できる確率が少しでも高い選手を選出することが求められる。
過去のレースを振り返り、傾向を確認し、データを確認し、大会結果を考慮し、その気象条件、コース条件、戦い方、出場選手レベルなど考えるべきことは多岐に渡る。

簡単にまとめると現在、トライアスロン個人種目におけるメダル獲得には次のことが絶対条件と考えられる。
1.スイムを第1集団でフィニッシュすること。
2.バイクを第1集団でフィニッシュすること。
3.ランで勝負できること。
4.暑さに強い

当たり前のことを、と思うだろう。
だがシンプルではあるが、非常に難しい課題なのだ。
第1集団から脱落した瞬間にメダルは消えてなくなる。
第2集団から追い上げ、逆転、というドラマは過去3回のオリンピックでは起きていない。
そして暑さに弱ければ先頭グループで走ろうと勝利はない。

これらの課題をクリアし、ホンモノの選手が勝ち残れる選考基準とならなければならない。
今回、選考基準の設定を更に困難にしたのは新たにミックスリレーが種目として加わったことだ。
次回のコラムではこのリレー選考についての考え方を伝えてゆきたいと思う。

150-1
【写真1】
2019年第1回ナショナルチーム男子合宿。
男子の復権を賭けて1月から始動。
 
 

2020 Tokyo Course
【写真2】
JTUのホームページにも掲載されている2020東京オリンピック・トライアスロンコース。
コースは完成していないが本年8月のオリンピック・クオリフィケーション・イベントでは同じコースでレースが行われる予定だ。
 
 

中山俊行プロフィール


中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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