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第73回コラム「本番のために練習しよう」

「トライアスロンが好きです」とか「練習が好きです」と言われると嬉しくなる。
一生懸命にトレーニングして、大会に向けて頑張ってゆく。そしてその努力が結果となって表れる。フィニッシュしたときの満足感は、自分の頑張った証明。だからこそ苦しくてもチャレンジを続けることができる。それがトライアスロンの魅力だと思う。頑張っている選手達!!
練習を頑張ることは素晴らしい。一生懸命な姿も素晴らしい。それを否定する気持ちは全くない。むしろ尊敬に値すると思っている。

でも時々思う。
選手達はレースで結果を残すために頑張っているのか。
それとも頑張る自分が好きだから頑張っているのか。
苦しさに耐える自分が好きだから頑張っているのか。
レベルアップするために頑張っているのか。
勝つため、レースで結果を残すために頑張ることが「普通」だと思っている私のとっては不思議に思うことが多い。

練習では強いのに本番に弱い選手。メンタル面に問題があるケースも多いが、一番多いのは調整方法に問題があるケース。
練習しないと不安になる。たくさん練習して安心感を得たい。目の前の満足感を追い求め、肝心のレースでは撃沈。
何のために練習するのかが理解できていないケースが多い。これはトップ選手も含めた全選手に言える。
レースが近付けば、テンションも上がる。そのために普段以上に身体は興奮し、調子が上がってくる。正確には「上がる気がしている」だけなのだが。そして気分が良いので更に練習。緊張感がピークに達するレース前日ごろに、違和感を覚える。疲労をやっと感じ始める。人によっては走り始めて、ようやく疲れて動かない自分の身体に気付く。当然、レースではベストなど出るはずもない。

練習で満足するための練習なのか、レースで良い結果を残すための練習なのか、良く考えてほしい。そうすれば自分の100%の力でレースを戦うことができるだろう。そのために毎日、頑張っているはずだから。

もっとも勝利を目指して頑張る姿は素晴らしいが、結果や勝利に執着する余り「ドラフティング行為」や「スイム・スタートで他人に迷惑を掛ける」選手が相変わらず数多く存在すると聞いている。トライアスロンは自分との闘いであるにもかかわらず、他人を利用し、陥しめて、自分の利益のみを追求するという姿は、選手としてではなく人間として浅ましい。

なぜ自分がトライアスロンに挑戦するのか、頭を冷やして考え直すべきだろう。自分の姿を見直して、このオフのトレーニングに励んでほしい。

(写真1)大道塾空手の世界大会

(写真1)大道塾空手の世界大会

(写真1)大道塾空手(空道)の世界大会でエキジビションに出場する中学生選手。たとえエキジビションであっても「勝つため」にトレーニングを積んできたのだ。直前まで先輩選手の指導を仰ぐ。勝って嬉し涙となるか、負けても悔し涙となるか。どちらであっても、それは真剣に取り組んできた証しだ。

(写真2)羽山店長還暦祝い

(写真2)羽山店長還暦祝い

(写真2)トライアスロン界の重鎮。トライアスロンショップ・ウエスティの羽山店長還暦祝い。多くのトライアスリートが集まった。羽山氏の人徳を物語る。現役のころから私もチーム練習に参加させてもらっている。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本の
トライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタート ライアス
ロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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