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第141回コラム「ブレる? ブレない?(その2)」

前回のコラムでは厳しい世界を知ることがスタートだと伝えた。
我らが日本選手はどう対応してゆけるのか。
その前に、そもそも本気で対応しようと思っているのか。

2020年東京オリンピックへ出場すること自体が大きな価値を持つ。
出場選手のブランド価値を高め、人生において大きなプラスとなる。
たとえ目標を達成しなかったとしても。
たとえ出場しただけだったとしても。

これは選手だけの話ではない。
指導したコーチ。
応援する人たち。
サポートした企業。
みんなブランド価値が上がる。
そして「結果はどうあれ頑張った」。
みんなが暖かい言葉を選手に伝えるだろう。
選手も満足、周囲も満足、みんなハッピーとなれる。
オリンピック前に格好だけ付けて「メダル獲得が目標です」と言っておけば結果については批判されない(競技団体および指導者は除く)。
悔しがる振りをしていれば誰も責めない。

恐ろしい。
本当に恐ろしい。
最初の決意など選手も含めて誰も気にしていない。
大会前の目標などすっかり忘れ去ってしまう(競技団体および一部の指導者は除く)。

人は楽な方に流れる。
簡単に設定した目標をブレさせる。
そう、目標は「オリンピックに出場すること」に簡単にすり替わってしまう。
なぜなら現実世界での目標達成は厳しいから。

選手も指導者も、そして支援者も本当の目標からブレることなく突き進めるか。
このメンタルの強さがなければ目標など達成できない。

この目標を本気で達成しようと2012年ロンドンに挑んだ選手が居た。
2016年リオデジャネイロに挑んだ選手が居た。
彼女たちは間違いなく本気だった。
ホンモノだった。
それでも惨敗という結果に終わったのだ。

ブレることなく戦ったからといっても簡単には目標達成できない。
しかし目標が簡単にブレる選手が勝てないことぐらい誰でも理解できるはずだ。
ホンモノだけが僅かな可能性を手にできる。
その僅かなチャンスを生かすために日々苦しいトレーニングに挑んでいる。
だからこそ人間性が問われるのだ。
だからこそ人間力が勝負を分けるのだ。

誰が最後までブレずに戦ってゆくのか。
皆さん自身の目で確認してほしい。

Mr. Taguchi
【写真1】
「金メダルを取る」と宣言し目標をブラさなかった男。
私の師匠の一人でもある「田口信教」先生(ミュンヘン五輪100m平泳ぎ金メダリスト)

 

 

ロッテルダム男子
【写真2】
WTS-GFロッテルダムのエリート男子。
メダルを取ろうと考えた場合、この位置で走る必要がある。
仮にここで走っていたとしてもゴメス、モーラ、ルイ、ブルーメンフェルトのうち2名を倒さなければならない。
その難しさは良いに想像できるはずだ。

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