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第139回コラム 「助っ人、現る」

PATRICK KELLY(パトリック・ケリー)。
日本チームのために来日した新たな指導者だ。
海外で戦った経験のある選手たちにとっては顔なじみのコーチだ。

カナダ出身の彼は母国でオリンピック金メダリスト、世界選手権王者を育成したのち、香港のコーチとして活動、そして本年より日本の指導陣に加わってもらうことになった。
2020年東京オリンピックに向けての強力な助っ人だ。

昨年(2016年)のアジアジュニア選手権(広島)。
男子ジュニアにおいてはパトリック擁する香港チームに1-3位を独占された。
過去、全く相手にしていなかったチームに敗北を喫したのだ。
何が変わったのか。
香港ジュニア男子の顔つきが変わった。
取組姿勢が変わった。
大会会場での態度が変わった。

日本チームの強化方法が間違っているとは思わない。
日本人指導者が劣っているとも思えない。
しかしエリート世界王者を育成した日本人指導者は残念ながらいない。
2020年の女子目標はメダル獲得、男子は入賞。
どちらも未知の世界。
しかしこの目標は達成必須のものでもある。
残された僅かな時間でその場所に到達するには「普通」では実現できない。
選手、指導者、関係者の全ての頭の中を世界標準に変えてゆく必要がある。

蒲郡大会前に有力男子選手たちにパトリック・コーチが質問をした。
「目標は何ですか」と。
ほとんどの選手が「2020東京オリンピック出場」「東京オリンピックでメダル獲得」と答えた。
本大会の3年前。
この時点で、世界シリーズにも出場できていない。
ワールドカップ出場で入賞経験もない。
コンチネンタルカップで表彰台にも立てない。
ITUランキングで100位にも入れない。
この選手がどうやって目標を達成できるのだろうか。
これでは私が「現役に復帰してオリンピックを目指します」と言っているのと何も変わらない。
特に男子選手の意識改革が急務と強く感じた瞬間であった。

目標達成に向けて残された時間はほんとうに僅か。
男女、エリート、U23、全てのカテゴリーにおいて世界王者を育成したパトリック・コーチの手腕を借りて、本気の選手だけで突き進んでゆくしかない。

パトリック指導

【写真1】
パトリック・コーチの指導を初めて受ける選手たち。
英語を当たり前としてトレーニング方法を学ぶ大きなチャンスでもある。

AC大阪スイムスタート

【写真2】
AC大阪大会。特別史跡でもある場所で大会が開催されたことの意義は大きい。
バイクのコースを調整してゆけば更に競技力の高い大会になるだろう。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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