4年後の東京オリンピック出場を夢見るジュニア・カテゴリー。
ジュニア・カテゴリーは、その年の12月31日付けで16歳以上、19歳以下位の選手を指す。
2016年3月現在、有望なジュニア選手は存在する。
しかし現実問題として大きな壁が立ちはだかっていることを伝えることにする。
ITUルールにおいては、18歳以上にならないと51.5kmのレースに出場することはできない。
つまり16歳、17歳の選手は2016年においてはスプリントディスタンスでしか戦えない。
ITUオリンピック出場規定がリオデジャネイロ・オリンピックと同じシステムで運営されるとするならば、2018年からオリンピックポイントが掛かったレースが開始される。
どの選手もこの時点(2018年5月現在)でITUランキングが100位前後まで届いていないと希望する世界シリーズ(WTS)やワールドカップ(WC)に出場することが難しくなる。
出場可能な大会が少ないジュニア選手がこの順位までランキングを上げる難しさは容易に理解できるだろう。
これが一つ目の大きな壁。
現時点で16歳、17歳の選手が出場可能なレースはスプリントのみ。
距離が短いため勢い(スピード)が必要となる。
だが海外選手と比較した場合、日本のジュニア選手は筋力面、体格面では圧倒的に劣る。
エリートもジュニアも同じだ。
そう考えるとより高いスピードを求められるスプリントレースは51.5kmレースより結果を出すことが難しいともいえる。
ジュニア選手は、筋力と体格の不利を抱えたままITU公式レースで結果を出さなければならない。
この身体能力の差が二つ目の壁。
更に17歳の選手は2017年、16歳の選手は2018年にならなければ51.5kmのレースに出場できない。
いきなり距離が倍になる。
同レベルのスピード、倍のスタミナ。
この二つを求められるレースに出場し経験豊富な外国選手と戦うことになる。
この経験の差が三つ目の壁。
四つめは国内ライバルという壁だ。
1か国に与えられる枠は最大で「3」。
4年間で上田藍を上回るランニングを身に付け、佐藤優香を上回るスイムを身に付ける。
高橋侑子も2020年前後にピークを迎えることは容易に予想できる。
世界で厳しい戦いを強いられている男子であっても田山、細田、古谷を上回る実力をこの4年で身に付ける必要がある。
高校生選手が2020年東京オリンピックに出場することが不可能と言っている訳ではない。
だが本気でそれを望むのであれば、今すぐ意識改革と、それに向けたトレーニングを開始しなければならない。
普通に頑張っているだけでは4つの壁など超えられるはずはない。
一歩前を行く先輩ライバル選手達は既に意識レベルもトレーニング負荷も高いレベルで行っている。
その選手たちを追い越さなければならないのだ。
既に一刻の猶予もないことを理解しなければならない。
過去には福井、田山、平尾、井出といった驚異的な若手選手が突如出現し、日本代表として戦ってきた。
不可能と思われることを可能とできるか否か。
それは自分次第だ。
【写真1】
2016年JTU認定記録会。
世界を目指し、日本選手権を目指し、強化指定選手を目指し。
目的は様々だが強くなりたいという気持ちは一緒だ。
【写真2】
都内で開催された自転車レース(大学生)。
1周1.5kmほどのコースを何周も走るクリテリウムと呼ばれるレース。
何十回とコーナーを回り、何十回と知れずダッシュを繰り返す。
レースでしか経験できない特殊なトレーニングとも言える。
一体、何人のトライアスリートが完走できるか疑問だ。
中山俊行プロフィール
中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。
【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督