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第15回「競技か遊びか・・・トライアスロンの分岐点」 

「トライアスロンって何だろう?」
最近、ときどき考える。アイアンマンというロングの大会。佐渡日本選手権のようなミドルの大会。51.5kmの大会。そしてドラフティング許可と不許可の大会。どれも同じトライアスロンなのだけど、接点は薄く、選手層は分かれてしまっている。
アイアンマンと、ミドルタイプの選手達は比較的近い考え方をもつ。また、ロング的な考え方を持ちつつ51.5kmの大会に参加する選手は多い。
だが、オリンピックなど51.5kmエリートを目指す選手の中には、ドラフティング許可レースばかりに目が行き、「自分の力で戦う」という基本を忘れがちな選手が増えてきている。ドラフティング許可により全くの別種目となったトライアスロン。それでもロングもショートも、ドラフティング許可も不許可も、それぞれがそれぞれを認めてお互いを尊重すればよいのだろうが、なかなかそうはならない。
 
トライアスロンをメジャーにしたいと多くのトライアスリートは考えていると思う。しかしトライアスロンをマイナー化しているのが、実はトライアスリート自身であることを感じた事はないだろうか。一度、是非考えてほしい。トライアスロンをメジャーにしようと努力するのか、一部の人間だけで楽しめばよい内向的なスポーツで終わらせるのか、その方向を決めるのは我々トライアスリートであることを忘れてはならない。

私自身強化本部員の肩書きをもらって、JTUの選手強化に協力させてもらっている。強化をするためには普及が必要であることは誰もが認めている。しかし普及をさせるためには強化も必要である。この両輪関係をどのように成り立たせるかをJTUも考え続けている。現在の「オリンピックでメダルを」という方向ばかり向いていることは好ましいことではないが、メジャー化するためにはマスコミの力を借りなければならない現実を理解した上での方法論であることは覚えておくべきだろう。賛否両論あると思うが、これはこれで一定の理解を示す必要はある。別に無理してトライアスロンをメジャー化する必要はないかもしれないが、「トライアスロンって何?」という20数年前を経験した世代としては、やはり誰もが知っていて、誰もが親近感を持てるようなスポーツになってほしい。
 
現在、エクステラ、アドベンチャーレース等、こういった新しいスポーツが生まれ、そして日本各地で開催されるようになってきた。これらにはトライアスロンが日本に入ってきた時と同じ匂いがする。競技性と、遊びを両立しているこれらの大会。今後、どういう方向に進んでゆくのか・・・注目してみたい。
 

写真:
私も少しだけお手伝いしているイベント、仁科三湖アドベンチャーSWIM&RUN大会。遊びを基本としたこの大会も、規模が大きくなるにつれ選択を迫られる日が来るだろう。主催者の矢口氏と。
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中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

 

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