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第16回オリンピアンの挑戦 

ハワイ・アイアンマン・レース。ITU世界選手権に並ぶ、アイアンマンレースの最高峰とされるレース。かつては「10月の満月に一番近い土曜日」に開催されていたこの大会。今は第3土曜日になっているらしい。ちょいと寂しい・・・

さて、今年のレースにはショートのスペシャリストとも言うべき、五輪代表の日本選手が参加する。西内洋行、田山寛豪の2人だ。もちろんシドニー後にロングへ転向した小原工も参加する。日本の誇るトライアスリートがハワイアイアンマンでどんな活躍を見せてくれるのか期待したい。ロングのスペシャリストである河原、松丸、谷、田村との戦い。そして世界への挑戦で、日本選手がどこまで行くことができるか注目したい。

ドラフティング・レースを重視し過ぎた結果、ショートに参加している多くの日本選手のBIKEレベルはどんどん低下の傾向を辿っている。ロングに挑戦した場合、選手の実力は白日の下にさらされる。「あのオリンピック選手は本当に強いのか、弱いのか。」
もちろん読者は結果しか知ることができないので、その内容は判らないだろう。しかし、そういう現実や批判を受けるリスクを背負ってでも挑戦する彼らを是非、応援してほしい。
アイアンマンを含め、ロングは本当に「トライアスロンに挑戦する」という強い意思が無いと完走することが難しい。確かにショート選手の、日本刀のような切れ味あるスピードは凄い。しかし、ロング選手のような鋼の意思を持っていないと、それは単に付け焼刃でしかない。オリンピック選手を目指すのであれば、アイアンマンのような鉄の意志、挫けない心、それを裏付けできる体力を持っていて欲しいと感じる。
「速いが弱い」最近のショートのトップ選手に感じる印象だ。

昨年、アテネ五輪で活躍した田山寛豪が新境地を開くために、アイアンマンへ挑戦することは彼の魂を磨き上げるだろう。この大会で本物の「強さ」を見出して欲しい。それを見守る八尾監督に拍手を送りたい。

良い結果であろうと悪い結果であろうと、アイアンマンを完走した、その先に何があるか・・・それは完走したことのある読者ならば理解してもらえると思う。だからこそ多くの人がアイアンマンに憧れを持つのだろう。

完走した選手、全員が勝者である。それがトライアスロンの原点。
アイアンマンで、世界の頂点を目指す彼らも、五輪で日本を背負って走る彼らも、全て同じトライアスリートである。トライアスリートは、トライアスリートの手によって育て上げられるという気持ちを全トライアスリートの持ってもらいたい。そして応援して欲しい。

(写真)
ハワイアイアンマンに参加したことがある選手なら見たことある風景ではかなろうか。
(1)漫画のような長い道をひた走る。
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(2)コース脇にある教会。何人かの日本人選手がここで結婚式を挙げている。
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中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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