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第17回「ヒーローは誰だ!?」 

10月23日に開催された日本選手権。久しぶりに素晴らしい日本選手の戦いを見ることができた。会場に来た観戦者もトライアスロンの迫力を充分に満喫できたのではないだろうか。こういう戦いを、いつでもできるようになれば日本選手が世界で活躍できる日も近いと感じることができる。

女子は庭田清美が優勝。「トライアスロンを楽しむ」という、原点ともいうべきスタイルでこのレースを走る。本当に速かった。本当に強かった。世界ランキングで10位以内に位置する実力を遺憾なく発揮しての勝利だ。その「楽しむ」という取り組み姿勢が彼女の最大の強さだ。今回、庭田の底力は、関根明子の存在によって更に引き出された。ランニングでの一騎打ち。ラン勝負ではほとんど負けたことがない関根に先着しての優勝は、歴史に残る名勝負と言えよう。
誤解をしてほしくないが、関根が弱かったのではない。2位とはいえ、関根の恐るべき「負けず嫌いスピリット」にも寒気がするほど迫力を感じた。決して万全の調子ではなかったはずだ。しかし「得意のランでは絶対に負けない」というオーラを発しての走りだった。
今回、1位、2位という結果になったが、それは今回、関根の強さを庭田が上回っただけ。そういう素晴らしい戦いを演じた上での結果だ。その差はほんの僅か。こういうレースが見たかった。トライアスロンは年齢に関係なく進化できる。それを証明してくれた。日本のミセス・トライアスロン達がどこまで行けるのか。楽しみで仕方が無い。

そして男子。優勝は平野司。1~3位を若手が占めた。「狙って勝つ」ということは凄く大きなプレッシャーを背負っての戦いになる。それを達成した平野には拍手を送りたい。しかし、その平野の底力を出させたのは間違いなく田山寛豪である。1週間前にハワイのアイアンマンを戦う。そこではSWIM 1位フィニッシュという日本トライアスロン史に残るような偉業を達成し、初出場ながら31位とまずまずの成績を収めた。結果に関しては「並」かもしれないが、その内容に関しては「極上」であるといえる。その疲労回復もできていないうちに「優勝」を狙って日本選手権に挑んだ。誰よりもアグレッシブに。その戦い方は、明らかに世界で戦うことを前提とした走りだった。それに引きづられるように同世代の平野、細田が意地を見せてくれた。

一般人には「レースの結果」が全ての評価の基準かもしれない。それを否定はしない。優勝することは難しい。だからこそ価値がある。しかし、それを上回る素晴らしい戦いを演じた選手が居ることもしっかりと見つめてほしい。

ヒーローは誰だ。

今回は田山寛豪であった。しかし、この戦いが全てではない。平野、田山、細田、山本、この若手選手達全員がヒーローとなる日がくることを願っている。

(写真):日本を支える怪物たち
写真1(上):中込英夫(38歳)彼に敗れた選手は強化指定選手の資格を剥奪すべきだ!
写真2(下):ロングの井出晋一と並ぶ、ショート最強のビジネスアスリート「福元哲郎(33歳)」
「エリート」と名乗りたいのであれば絶対に負けてはならないトライアスロン界の門番2人だ。
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中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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