格闘技においては他のスポーツ以上に体格差、筋力の強さが勝負に大きく影響する。だから体重別に日本人の中では圧倒的なパワーを誇っている選手であっても、巨大な海外選手の前では平均レベルになってしまう。
重量級では体格で劣り、中量、軽量級では体重は同じでも筋肉量で劣る。
では日本人は勝てないか? 結果を見てみると、4階級の内2階級で優勝している。もちろん日本を起源とする格闘技だから、という理由もあるだろう。しかしそれだけではない。
外国選手のパワーに打ち勝つにはパワーを!
波に負けないためにはパワーを!
SWIMバトルに負けないためにはパワーを!
よく聞くセリフではなかろうか。パワーに打ち勝つためにはパワーをという発想自体は間違いではない。しかし、この方法論を現実で考えてみると日本選手はほとんど勝てないという結果になる。残念ながら生まれ持った筋肉特性、骨格が違うのだから。しかし現実の世界では勝っている。その理由は何だろう。
肉体的な弱さを精神的な強さでカバーする。常識に囚われない発想のトレーニング、より高い技術。練習量がモノをいうトライアスロンでは才能以上に積み上げたものがレベルアップへとつながる。その他にも要因は様々だ。
今回の空道世界選手権で勝ち上がった日本選手に中には日本古来の「古武道」の動きを取り入れた選手も多かった。ボクシングや空手の技術に留まらず、日本古来の身体の使い方を取り入れた戦いをする選手だ。圧倒的なパワーを受け流し、自分のペースに持ち込む。テレビのような派手なノックアウトシーンは少ないかもしれないが、明らかに自分の戦いの世界に相手を引き込んでいた。
「日本人に合った戦い方」というものが昔から話題に上っている。しかしほとんどの選手は技術論に囚われてしまう。エンジョイトライアスリートであれば、それでも構わない。しかし世界で戦うのであれば、猿真似だけでは決して勝つことはできない。オフだからこそ今ここで、自分の目指す道を確認して、様々な練習に挑戦しながら自分のスタイルを築き、そして世界に挑戦して欲しい。
(写真)
1、どんな種目であれ試合前は緊張する。痛みを伴う競技であれば尚更だ。念入りなウォームアップに励む日本代表選手。
2、 大会会場風景。緊張感はトライアスロンのスタートと同じ。
中山俊行プロフィール
中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。
【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督