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第31回「勝つ、ということ」 

トライアスロンはスポーツである。

スポーツである以上は、そこに勝敗が存在する。しかし他の選手に勝つことだけが勝負ではない。「己自身との戦いに勝つ」。これがトライアスロンの本質だ。

エイジグループで強い選手は、その中身も強いケースが多い。
忙しい仕事の合間を縫って練習時間を作り出し、その僅かな時間を精一杯利用して練習する。だから常に前を向いて取り組んでいる。肉体的にも精神的にも強い選手が出現する。
高齢の選手も同様。「年齢による衰え」という自然の流れに対抗し、自分の体調をしっかりと把握しながら完走への道を開いてゆく。スピードは遅くても、その完走に賭ける想いは強い。だから順位はともかく「自分に勝利する選手」は多い。

エリート選手は確かに速い。1日の多くの時間を練習に費やし、ある者は人生を賭けて取り組んでいる。そこから収入を得るわけだから必死にもなる・・・はずなのだが。
ほとんどの選手が一定のレベルを超えると「弱く」なる。「速いが弱い」。
プライドを持って臨むことは大切だが、それが慢心に変わってしまっている。
多くのレースに参加せざるを得ない状況から、真剣勝負という感覚が無くなってくる。
レースを簡単に投げる。死力を尽くす手前で妥協する。酷い場合は、スタート地点に立つ前に既に緊張感ゼロで終わってしまっている。
「勝つ」という執念が感じられない。溢れるばかりの才能があるのに。

世界で戦うと豪語するなら頂点目指せ!
選手には2種類の選手が存在する。頂点を目指す選手と、そうでない選手だ。
前者をプロと呼び、後者をアマチュアと呼ぶ。それが私の持論だ!
「お前はプロか?」と問うたら、即座に「YES」と答えられる「真のプロ選手」の出現を望む。
「プロ」と自分で名乗るのであれば、戦いの中身で観客を魅了させて観衆に勝利し、結果で自分に勝利する。そういう「勝つこと」にこだわった選手を目指してほしい。

8月13日アジア選手権、8月27日ユニバーシアード、9月3日世界選手権。
果たしてプロ選手は存在するか。MSPO読者自身の目で確かめてほしい!

(写真1)
勝利へのこだわりが勝敗を決める。右から2番目・金髪の本田選手は見事、パンクラス新人王戦を制す。
プロ選手と、プロを目指す選手達。原始的だが一番明確に結果がみえるのが総合格闘技だ。

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(写真2)
小名浜大会でのひとコマ。左から2番目の男に注目。敗れはしたもののSWIMからガンガン突っ走った長谷川裕一。この日のコイツは格好良かった。こういう勝とうとする姿勢が重要だ!

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中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

 

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