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第41回「2007年ワールドカップ開幕」 

3月25日オーストラリアのムールラバでワールドカップが開催された。
来年の北京五輪に向けて、選手達の激烈な争いが始まった。
女子では庭田が7位と相変わらずの強さを誇っている。更にはエンジン始動の悪い関根が11位と素晴らしいスタートを切った。他の選手も成績自体は芳しくなくても冬に積んできたトレーニングの手応えを感じたことだろう。
男子では山本良介が好発進の16位。先のデュアスロン日本選手権においても積極的なレースで準優勝するなど確実に精神面が強化されたと感じている。

一方、ベテラン勢を倒し、一発逆転に賭ける若手グループは同日に開催されたタイでの大会に出場。女子では井出樹里が優勝し、確実にポイントを稼ぐ。4位には足立真梨子。男子は佐藤が3位に喰い込む。この3名は国際連盟の規程によりワールドカップ石垣島大会に出場できるか微妙ではある。しかし井出などは確実に現在の日本トップレベルの力を身につけてきている。少しでも早く世界での戦いを見てみたいものだ。

昔から頑張って日本をリードし、参加枠を獲得してきた選手の努力を評価しなければならない。
同時にポイントはほとんど持っていないが確実に強くなった新人が世界へ飛び立つための扉を開かなければならない。どちらを優先するか、、、選手選考をする場合に避けては通れない問題だ。

女子フィギアスケートで実証されたように、荒川静香選手も安藤美姫選手も一度は見放された選手だ。しかし見事に復活し、オリンピック金メダリスト、世界選手権金メダリストと世界の頂点に立っている。
同時に浅田真央選手のように一気に頭角を表し、失敗はしても、確実の世界トップレベルの力を示す選手も存在する。

我々が望むのは「本当に強い選手」であり、そういう可能性を持った選手には、より多くのチャンスを与えたいということ。
見せ掛けだけの強い選手、小手先だけでポイントを獲得し順位を上げる選手では大舞台で勝つことは不可能だ。
指導者であれば「真に強い選手を作り上げること」を目標とし、強化スタッフであれば「真に強い選手にチャンスを与えること」を実行してゆかなければならない。
差別や個人的な感情の排除を考えると、規程通りの選考しかできず、本当に強い選手を選ぶことが難しい現代。
そういう難題を抱えながらも、「本当に強い選手」を選び、世界で戦うことを選手達を応援してゆきたい。

 

38昨年レース中の事故で骨折して半年間かけて復活をしてきた選手。その執念が実るか否か。
まさに気合と根性で勝負だ。
38_2強化本部会議の一コマ。個人個人考え方は違っても日本選手が世界で戦うことを目標として熱い論議を戦わせる。批判もあるだろうが、「本当に強い選手を輩出する」という最も大切な想いを全員が持って活動している。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本の
トライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタート ライアス
ロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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