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第43回JOCの意思表明

先日、JOCコーチ会議に参加してきた。「Team Japan」としての意思統一を図り、各競技団体が一致団結して日本の競技能力を上げていこうとするための定期的な会議だ。一般のアスリートには耳にする機会が少ないと思うので、その中でも特に伝えておきたいことをコラムで紹介してみようと思う。

会議は「競技の結果」、「それに対する分析」、そして「方針と具体策」という基本に忠実な方法を示すところから始まる。興味深い内容も多いがここには記載しない。

今回は北京オリンピックを見据えた話が中心であった。このコラムでは、オリンピックを目指す選手であれば知っておいてほしいこと、また選手に係わるコーチ・関係者にはその言葉の本当の意味を充分に噛み締めて知っておいてほしいことを抜粋して書いておく。

(1)強化は勝つことが目的である。参加させることに意義はない。

特に目新しい話ではない。しかしこれを公言できるコーチは少ない。強化の現場を知れば知るほど発言し辛い言葉であり、選手の気持ちを理解すればするほど伝えることが難しい言葉である。強化の現場を知らない関係者ほど気楽にこのセリフを言うが、ある意味それは非常に無責任である。
現場を良く知り、選手の痛みを知った上で、この鬼のような言葉を伝え、明確な指導、方向付けをしなければならない。指導者、コーチにとって一番辛いことかもしれない。だがこれが「世界を目指す者」の常識であることを忘れてはならない。

(2)オリンピックは国家事業であり国費を使っている以上、結果を出す責任がある。

これこそがオリンピックのオリンピックたる所以である。世界選手権、アジア選手権なども各競技団体にとっての一大事業であるが、オリンピックが特別視されるのはここにある。既に「個人」や「競技団体」の裁量レベルを超えている。
開催が4年に一度であることもプレッシャーの掛かる大きな要因であるが、日の丸を背負うことの重さと、その本当の意味を理解できていない選手ほど、本番で重圧に押しつぶされる。
オリンピックへの参加を目指すのであれば、このことも意識した上で普段の強化を勧めるべきだろう。派遣された選手は、結果を出す「責任」がある・・・重い言葉だ。

(3)「心・技・体」から「体→心→技」へと変わりつつある。

これは具体的な話である。トライアスロンに限らず、どこの競技団体でも選手は「技術」ばかりを追い求め、基礎体力がどんどん低下している傾向が強いという意味。更には精神的な強さも失いつつあるということを指摘している。
「もっと原点を見つめなおせ!!」というJOCの認識である。それはそのままトライアスロンに当てはまっている。

(4)五輪代表は日の丸をつけた公人であり、日本選手団の一員である。

トライアスロンは個人競技のために、この意識は特に弱い。かく言う私もとても薄かった。
しかし、アテネで好成績を治めた「競泳」や「柔道」をみていれば判るように好成績を挙げている種目では、チーム全員が一丸となって試合に参加する選手を応援していた。こういった一体感が、悪いプレッシャーを和らげ、良いプレッシャーを増幅させてゆく。そういった意味でも「Team Japan」という意識を持つべし、ということ。

金メダル以外は全て「敗北」とみなされる日本柔道。あれぐらい高い意識をもってトライアスリートも「世界一」に挑んでほしいものだ。それでも結果が伴うかどうか判らない厳しい勝負の世界が「オリンピック」である。
40風にはためく「日の丸」
オリンピックのトライアスロンでいつの日か眺めたい風景である。全てのトライアスリートに代表となった選手達を応援してもらいたい。
40_2堅苦しい・・・と思いつつも、こういう緊張感ある会議もとても有意義だと思う。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本の
トライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタート ライアス
ロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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