高校生大会は自分の目でみることはできなかったが相当にレベルアップしているようだ。男子は並み居る強豪を抑えて新鋭・慶応高校の水野孟が優勝。女子は将来が期待されている高橋侑子が優勝した。日本では中・高校生トライアスリートの活躍する場が極端に少ない。環境の悪さにも挫けずに頑張って成長していってほしい。
オールキッズ大会。感想を一言で述べれば「格好良い」。小学生、中学生とは思えないような素晴らしいスピード、キレイなバイク&ランニング・フォーム。ウエアやBIKEなどの機材面もエリート選手と遜色ない。細身で手足も長く、スタイルも良い。レベルも驚くぐらい高い。
だが残念なことに、マナーの悪さも気になった。勝つために手段を選ばない選手、ドラフィティングを平然とやる選手。入賞したい気持ちは理解できるが目を覆いたくなる部分もあった。この年代から、そんな情け無いレースをしていては将来の希望はない。人間は甘い誘惑を覚えると中々シビアな世界に戻ることが難しい。
確かに、オールキッズ大会は、小学生においては国内最大のビッグイベント、中学生においても数少ない全国規模の大会。レースに賭ける心意気は素晴らしい。しかし、トライアスリートとしての根本的な意識を置き去りにしてほしくない。「トライアスロンは自分自身のチカラで自分自身と戦う」が基本にあるはずだ。
子供は大人の真似をする。一般大会でドラフティング問題が取り沙汰されているが、それがそのまま子供の大会にも悪影響を与えている。プロ紛いの強豪選手、元プロ選手が平気でドラフティングをする。自分の行為を正当化するために周囲の人間をも引き込もうとする。そういう悲しい話も耳に入ってくる。選手としてばかりでなく人間としても信じられない。
しかし、それに染まってしまうエイジグループ選手も少なくない。「トライアスロンは自分の限界への挑戦だ」と言いながら全く行動が伴っていない。悲しい現実だ。
「トライアスリート」と名乗りたいのであれば、トライアスリートらしいマナーを身につけて欲しい。大人も子供もだ!!
ここで戦う優秀な金の卵達。将来、どんな活躍をしてくれるのか。とても楽しみだ。
残念なことに、オールキッズで活躍していた選手がエリートで活躍するケースは極めて少ない。シドニー&アテネの2回の五輪参加者にキッズ時代から活躍していた選手は一人もいない。五輪代表権争いに残った選手ですら極めて少ない。大松沙央里、中川絵理などほんの一握りだ。その理由はどこにあるのか。我が子の将来を期待するのであれば親御さんにも一緒に考えて欲しい。
今回も中島靖弘ジュニア強化委員が、ジュニア期に強化して欲しいトレーニングについて繰り返し力説していた。その声がどこまで届いていただろうか。五輪を本気で目指すのであれば本当に大切な言葉だった。
サッカーJリーグのような一貫指導システムの構築が急がれるところだ。
(写真1)左
かつてJOCカップを受賞した蔵本葵選手。次の世代へJOCカップを渡す。その精神は受け継がれるか? 未来に期待する(男子受賞者・土井政英、女子受賞者・知花果林)。
(写真2)右
かつて学連委員長を務めた男・稲村。今は社会人となり、広告代理店に勤務し、トライアスロンを裏から支えてくれる。トライアスロンを愛してくれる貴重な人材だ。
(写真3)左
中学2年生・男子優勝者・阿部有希のRUN。エリートと遜色ないフォームだ。このまま成長してくれることを臨む。
(写真4)右
こちらは中1女子の優勝者、木下涼風。見事、競り勝ち優勝をもぎ取る。キッズの世界で、その名は知られている。燃え尽きることなく、10年後にエリートの世界でも名を馳せていることを願う。
中山俊行プロフィール
中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本の
トライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタート ライアス
ロン」。
【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督