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第53回「一生懸命」の落とし穴 

2008年となって早くも1ヶ月以上が経った。北京五輪までの残された時間はおよそ6ヶ月。
候補として名乗りを上げたい選手達は今も各地でトレーニングに励んでいる。
この最後の冬を越えて化けることができた選手はいるのだろうか!?期待は高まる。

どの選手も一生懸命トレーニングしていることは間違いない。
だがこの「一生懸命」には落とし穴がある。
A選手の一生懸命は毎日5時間の練習。B選手の一生懸命は毎日7時間の練習。どちらも真面目に練習している。さて、どちらが勝つ可能性が高いだろうか。
「一生懸命練習した者は報われる」と言われるが、結果としてA選手は選考されず、B選手が選考された。こうして文章で示すと選考された理由は誰が見ても理解できるはずだ。
しかし、現場の選手自身、指導者自身、身近な応援者にとっては意外と見えていない。
「なぜこんなに頑張ったのに選ばれなかったのだろう」「どうしてあんなに頑張っていた選手が選ばれないのだろう」

答えは簡単だ。A選手よりB選手の方が頑張っていたからだ。
上記は、例として判りやすい「時間」を使って説明した。
たとえ同じ時間を練習した者同士であっても、「一生懸命頑張ったのか」「死に物狂いで頑張ったのか」、ここで差は生じる。

「世界を目指す!」。
この意味を本当に理解している選手はほんの一握りしか存在しない。
世界の頂点がどこにあるのか、具体的な数字で示すことはできない。明確に見ることもできない。
だから選手は、自分自身の限界を超え、自身を鍛え上げてゆく以外、そこに辿り着く方法はない。終点がどこにあるか判らない以上、どれだけ頑張っても「これで大丈夫」という答えは出てこない。
頂点を意識した練習の有無、真剣みを持った日々の練習の積み重ねが最終的に勝負を決する。
あなた自身は、あなたの応援している選手は、本当に一生懸命か?
その答えはもうすぐハッキリする。

50 (1)第1ラウンド、28秒でノックアウト勝利。パンクラス・デビュー戦を見事に飾った川原選手。
入門当時からしっかりと目標を掲げ、本当に良く練習した。わずか20歳だ。
本当の勝負はここから始まる。

50_2身近に居る先輩の意識の高さによって、その本人の意識レベルも大きく変わってくる。
「良い先輩とは何か」「良い指導者とは何か」。
自分が、限界を超えようとするとき他人の力を借りることは悪いことではない。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本の
トライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタート ライアス
ロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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