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第55回「今この一瞬に全てを賭ける」 

各競技で北京オリンピック代表選手が次々と決定してゆく。
トライアスロンの代表選考は、まずは5月2日、3日に中国で開催されるアジア選手権優勝者が出場権を獲得することになる。そして最終的に決定するのは6月7日、8日に開催される世界選手権(カナダ・バンクーバー)終了後となる。基本的には国際連盟(ITU)の選考基準によって選定されてしまうシステムになっている。誰が資格を勝ち取るのか・・・楽しみに見ていてほしい。

直接的な選考レースではないが重要参考レースとして開催されたワールドカップ石垣島大会(4月13日開催)。結果は男子で田山寛豪が9位、女子では井出樹里が4位、田中敬子が15位という結果を残した。オリンピックイヤーは世界のレベルが急上昇することを考えても、この3名は勝負に参加していた。残りの選手は残念ながら勝負に参加させてもらえなかった。
今回ベテラン勢は不調に終わったが「決めるべきところで決める」という集中力がベテランの底力。若手とベテランの争いにも注目したい。

「オリンピックに出場したい」という選手はたくさん存在する。しかしそのための「本当の努力」をしている選手は非常に少ない。練習するのは当たり前。頑張るのも当たり前。一生懸命するのも当たり前。オリンピックに出場するのであれば、このレベルでは話にならない。
1日は24時間。寝る時間も含めて、食事をすること、リラックスすること、もちろん練習すること、全てを「自分が強くなること」に費やす必要があると考える。

そういう選手を久しぶりに目にした。その選手はこの先の日本を背負っていってくれるだろう。それほど勝利を渇望し、奴はそのために「生きること全て」を賭けている。「メダルを目指す」という言葉が全く嘘に聞こえない。明日を見据えつつ「今」という時間を大切にしている。

「オリンピック」という言葉を口にする選手達。本当にその覚悟がどこまであるのだろう。
参加枠あるから良いメンバーが居なくても参加出場させることは正しいのか間違っているのか。
「今」は世界に通用しなくても、競技発展のため、選手の経験のため、モチベーションのため、未来のため参加させる。確かにその必要性は理解できる。しかし覚悟のない選手を出して何の意味があるだろうか?
覚悟のない選手を出場させたところで全く役立たない。
オリンピックだけではない。アジア選手権であろうと、世界選手権であろうと同じことが言える。
本当に、戦える選手、戦う意思のある選手だけでナショナル・チームは構成されるべきだ。

「今この一瞬に全てを賭ける」。この積み重ねが世界の頂点へと通じてゆく。
「日本」という看板を背負って戦う以上は、それだけの強い意思と信念、覚悟をもって戦ってほしい。
52「世界で戦うこと」の意味を知る、現在唯一の日本男子選手・田山寛豪。他の男子選手は、彼と何が違うのか、真剣に考えて欲しい。速い遅い、タイムが良い悪い、技術などの問題ではない。
52_2世界の修羅場をくぐりぬけ生き残ってきた。今回は不調に終わったが、戦うべき相手が自分自身であることを理解し最後のチャンスに賭ける庭田清美。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本の
トライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタート ライアス
ロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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