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第56回「勝利への執念」

去る5月2日、3日に開催されたアジア選手権。女子は1~3位を日本選手が独占。男子も1位と3位に入賞を果たした。1位になった女子の上田藍選手、男子の山本良介選手はこれで北京オリンピックのトライアスロン日本代表選手として決定。他の選手達は6月7日、8日の世界選手権(バンクーバー・カナダ)で代表権の獲得を狙う。

「代表権」というチケットはたったの1枚。優勝者にしか与えられない。3位に入賞できれば世界選手権の代表権が獲得できる訳ではあるが、2位以下の選手にとっては敗北感しか感じられないだろう。「1位と2位には天と地ほどの違いがある」と前回のコラムで伝えたが、その違いを理解できたと思う。優勝した2人はもちろん、井出、庭田、田山、そして中国選手、カザフスタン選手、その全員が勝利だけを目指して戦ったはずだ。本当に勝利を目指した選手達は「アジアで勝てなければ世界でも勝てるはずがない」ことも理解している。

バイク終了時に1分15秒差。しかも前を走るのは井出樹里、庭田清美というRUNの実力も、トライアスロンの実力もある選手達。冷静に考えれば逆転など不可能。しかし、その無理とも思える状況をひっくり返した上田藍選手。「レースは終わってみなければ判らない。」これを真に実現して見せた。山根英紀コーチの想像をも上回る力を発揮しての勝利だった。
「ここで勝たなければ次ぎはない」。そのことを本当に理解していたからこそ、執念で勝利をもぎ取った山本良介。「勝つことことにこだわる」としながらも惨敗した日本選手権。その雪辱を果たすと共に、「勝ちたい気持ち」を思い出すことができた勝負となった。

「日本」という看板を背負い、我々トライアスリートや応援者達の「夢」や「希望」を背負って戦う代表選手に誰が選ばれるのか、残り1ヶ月の戦いに注目してほしい。そして選ばれた選手達は、くれぐれも「出場できたこと」に満足して終わらないでもらいたい。今回のレースを全く同じ気持ちでオリンピックに臨め!
そう・・・「勝利への執念」を持って!!
53実力もある。ルックスも良い。しかし最も注目すべきは「天運」をも惹きつける素晴らしい笑顔と前向きな意思の強さ。それが彼女の最大の武器だ。北京オリンピック・トライアスロン日本代表選手・上田藍。(写真提供: Satoshi Takasaki)
53_2北京オリンピック・トライアスロン日本代表選手「最後の狼」山本良介。今後は、男子選手の強化もシステム化されなければレベルアップは望めない。サポートは受けても、自分自身で全てをマネージメントし、戦ってきた第一世代トライアスリート・スタイル。こんな化石のようなスタイルを貫き、生き残り、そして五輪日本代表選手の座を勝ち取るのは彼が最後だろう。(写真提供: Satoshi Takasaki)

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本の
トライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタート ライアス
ロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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